何時かわからないけれど夜中に目が覚めた時には大雨になっていた。頭上で雨がテントのカバーに当たる音。時折松の木からしたたり落ちてくる大粒の水滴がテントの屋根を打って野太い音がする。明るくなって目が覚めてからも雨は降り続く。外に出て行く気になれず、テントの中で雨をやり過ごした。割と寒いので寝袋に半身突っ込む。
こうして屋根もない場所で完全に雨ざらしになってしまったとしても、テントの中で最低限生きていることができる。この装備が本当にありがたいと思った。
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大きな問題。昨日からスマホがほとんど使えなくなってしまった。３年前に購入した京セラのアンドロイドs4という機種。充電をして電源がついてもすぐに電源オフ状態になってしまう。3年ってそんなに期間が経っていない気もするけど、自分の使い方が悪かったのかもしれない。
さあ、どうするか。すごく悩んだ。
スマホ。ブルガリアでiPhoneを道端に落とし、その上をトラックが通過して完全に壊れてしまう事故。アルバニアの山道でスマホを落としてしまう事故。もう、自分はスマホをまともに持っていることすら自信がなくなっていた。もはや消耗品くらいの捉え方だ。
でもやっぱり、流石にスマホは便利で地図の確認や友達との連絡、ありとあらゆる場面で便利。というか身の安全の確保に繋がる。
やっぱり持っておきたい。
コルチャの街中で５件くらい中古携帯電話ショップを回ってiPhone7を購入した。132ユーロ。日本向けのの通販で見た限り8000円くらい高い。痛い。痛手だけど、これは仕方がないと割り切った。
こうして書くと簡単だけど、決断するまでに4時間くらいぐるぐる悩んだ。悩んだ。
ここまで何度も何度も「何が起こったって大丈夫だ」的な心構えを自分の中で確認していったつもりだった。それでもこうして大きく（普通の人からすると大した額じゃないけど）お金を使う場面になると、暗い気持ちになっていった。
古い機種で大丈夫なのか、また無くしたり壊したりしないか、また新しいものを買うお金なんてある保証はない、お金はなんだかんだで有限だ、お金を作る方法を新たに考案しなければならないような気がするけど、思いつくことどれもすごく辛そう、この際物に依存しないことに徹底的にこだわってスマホすら持たない生き方を模索した方が良いか。
買ったは良いけど、重く考え込みすぎた反動なのか、そのあとの移動でも後ろ向きな感覚は続いた。
もう日がほとんど暮れていたけどコルチャから出発。町外れでフレンドリーな人の場所の近くにテントを貼るイメージで進む。
道路脇の街灯がほとんどない。真っ暗。なるべく早く場所を決めたい。
灯りのついているカフェやレストランを尋ねて回った。6軒くらい尋ねたけれどダメだった。アルバニアにしてはかなり断られてる方だ。
断られる時に不遜な気持ちが湧いてきた。明らかに庭に使わなさそうな広いスペースがあるのに「無理」と言われて「ケチだなぁ」と思ってしまったり、話し合いもなしに「Get away」とだけ言われてイラッとしてしまったりもした。態度に出たと思う。
突然目の前に現れて泊まる場所を探す旅人に対してそういう対応はとても自然なことだと思う。それなのにそういう気持ちが自分の中に湧いてきたのは、多分スマホの件で先行きの暗さ想像して「どうせ自分は救われない」というやさぐれた前提を自らセッティングしていたからだと思う。
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最終的には一件の小さなカフェの敷地にテントを張らせてもらうことができた。カフェの中にはWi-Fiも電源もあって少しだけ作業もできた。その場にいたおじさん達にちょいちょい絡まれる。
アルバニアで田舎寄りの人と出会うと彼らはほぼ必ずアルコール度数50%のラキという葡萄の蒸留酒を勧めてくる。すごくきつい。美味しいとは思えない。
ラキは彼らの伝統で日常、そしてきつい酒だから余所者に飲ませてその反応を楽しみたいのだと思う。自分はアルコールをだんだん身体が好まなくなってきているのだけど、テントを張らせてくれる人達に愛想よくするために受け取った。
こんなやさぐれるタイミングで落ち着ける場所に行けたことはとにかくありがたい。寝袋に入ってやさぐれた部分に手を当てた。
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〜写真〜
ギリシャのアントニス宅でいただいた差し入れまとめ。この他にトマトソースの瓶２つ入れ忘れていることに気がついた。写真の左端のビニール袋に入っているのはオリーブオイル500ml×2。嬉しい悲鳴です。
公園で狐。餌付けされなれているようで割と近くにやってきた。
それは美味しいもの入ってないぞ。
コルチャの街にはこういう気持ちの良い整った公園がある。
辿り着いた小さなカフェ
記念写真が飾ってある。
