HIRO EATS THE EARTH

地球まるごといただきます

本心に正直に(Dakar)

「数日休んでも構わない」と言ってくれたロニーの言葉をアテにしてコリーナの家にもう1日滞在することにした。今後どうしようかと考えていた。

しかしまあ正直なところ、ベオママから降りたいと思っていた。

これはもう、シンプルに自分の直感。ロニーともう一緒にいたいと思わない。昨日のチョコレート容器事件wをはじめ、その少し前から彼のアグレッシブさはエスカレートしてきており、これから本格的な出航前はもっと凄いことになりそうな気がする。もはや自分にとっては危険人物である。ロニーから受け取る波動、ものすごく攻撃的な態度とか、人の話に耳を傾けようとしない姿勢とか、金に対する執着感とか、ハリネズミ的に外部の人間を信頼しない感じとか、そういったひとつひとつがぼくのテンションを落とす。自分のエネルギーが落ちてしまう感じがする。

ここまでのベオママでの生活の記録の書き方でぼくの彼に対する悪意が滲み出てしまっているかもしれないけれど、ぼくは感情的に彼のことが好きになれないだけで、彼は良い人間であると思っていることは言っておきたい。むしろあれだけの大物はなかなかいない。閉塞する社会に自由の風穴を開けんと活動する野心家であり、スキルアップのために必要なことは嬉々として教えてくれていたし、仕事も理不尽な要求はほとんどなかった。昨日だって感情任せになったことを謝ってこうして休みもくれている。カリスマ性ある人格者だと思う。

が、もはや自分は自分の直感信者であり、その直感は時として頭で理解できるありとあらゆる常識とは関係ない方角を指し示す。船を降り、それから続く自分の自由な旅にワクワクする気持ちは向いていて、根拠はそれで十分だった。一日中何度ゆっくり瞑想してもそれは変わらなかった。

元はと言えば自分は南アメリカに行きたいだけであり、その過程はなんでも良く、別にベオママのような立派な船である必要はない。たまたま時の巡り合わせで彼の手伝いを行うことになっただけ。実際に直面したベオママの現実的な状況や彼が設けているルールはぼくにとって想像以上にハードで心の許容量を超えた。

それに、度重なる出航の延期によって元々の目的だったアメリカ大陸行きのシーズンはもうとっくに終わってハリケーンが危惧されるシーズンに差し掛かっていた。たとえカーボベルデに行けたとしてもその先、大西洋を横断する船と巡り合うのは難しいだろうと思われる。

色々な要素を合わせて考えても下船が自分の第一希望。自分の心に従うということを指針にしてきてよかったと思う。今までの自分だったら自分の直感よりもロニーの都合や自分の心の弱さの克服といった、より自分のキャパシティを越える方向を目指していただろうから。

ジャカリヤとコリーナはぼくと一緒のカーボベルデへの船旅を望んでいたのでとても残念そうにしていた。そこが一番心苦しい。