HIRO EATS THE EARTH

地球まるごといただきます

言語を学ぶ機会(Dakar)

モル曰く、スイスの「海賊」ロニーは月曜日から彼の船に泊まらせてくれるということだった。今月の初めにダカールにやってきてからおよそ二週間、ついに状況が動いた。「やっと」という感じだった。

この二週間、ろくに何もしてはいなかった。時間はあるからここ、首都のダカールの観光にでも行けそうなものだけど、人が多すぎるしコンクリートジャングルだし空気も心地よさを感じない。その上、自分の心の調子がものすごく落ちていて、アメリカ行きのシーズンを逃してしまった残念感、ここまでの日程の段取りに対する後悔を引きずり元気に走り回る気分じゃなかった。

それでもこの何もしない期間を使って何か次につながることをやろうという気持ちは持ち続け、フランス語の勉強をちまちまやっていた。インターネットからPDFで単語帳や「星の王子様」の原文と日本語訳、フランスのニュースサイトから文章付きの音声をダウンロードし、読み込んで聴き込んでいたりした。

自分はフランスを数回旅したことがあるし、アフリカに入ってから訪れた三カ国いずれもフランス語がメジャーに話される国だし、フランス語話者にはもうたくさん出会ってきたけれど、結局、少しもフランス語を習得することはできなかった。発音や読み方のメソッドが英語とは全く違うので耳で聞いても文字を目にしても頭に残らず流れ去る。旅する前はただ現地に身を置いているだけで言語なんて覚えられるんじゃないの?と舐めていたけれど、自分の場合はダメだった。

そんな感じのゼロからのスタートなので地道な受験生みたいな勉強法だった。フランス語を話す人が周りにいるのだからその人たちから教えて貰えばよさそうなものだけど自分は何もわからなさすぎて、その段階ですらない。ただ迷惑にしかならない予感がぷんぷんするので受験生モードになった。

最初はもちろん地道すぎて一生かかってもできるようにならなさそうで時間の無駄だと思ってしまうが、それでも続けているとある瞬間からまとまった文章から意味を解読できるようになり始める。やった分だけ上手くなれる感が気持ち良くてやる気が出てくる。パンを買ったときについてくる新聞紙、洗剤の容器の注意書き、店に貼ってある貼り紙、自分のiPhoneの言語をフランス語に変えていじる、などなどフランス語を追い求めるようになった。言語学習はとにかく場数場数。話すらもできないうちはさまざまな場所で使われている言葉を目にしたり耳にしたりすることだと思う。

フランス語話者と普通に会話できるようになるのはもう何十年先になるのかわからないけれど、こうやって今、練習そのものを心地よく楽しめることが良いことだと思う。

今日のモルは近所の家から大きな絨毯のクリーニングを受託した。

裏庭で手洗いする男たち。