HIRO EATS THE EARTH

地球まるごといただきます

ダラー(Malikounda)

困窮した生活環境にあるセネガルイスラム学徒「タリべ」の支援に取り組むイタリアの非営利団体La Maison De Enfants」の施設に滞在している。

活動3日目。推定270人の子供が施設を訪れた。

ひと通り子供たちと一緒に過ごした後、毎週火曜に行われる出張医療ケアに同行させていただいた。先輩ボランティアのマルティナと一緒に施設から5kmほど離れたところにある一軒のダラーへ。

ダラーとは扶養不可能が主な理由で親元を離されたタリべが生活する宿舎兼学舎のこと。と言っても一言で言えば廃墟である。窓や扉が一切ない小さな建物。そこに見たところ50人くらいの子供がコーランを覚えるための暗唱をしていた。体を前後に揺らしながらボロボロの本や文章を書き取った木板を見ながらずっとお経のように唱え続けていた。ダラーで教えるのはこれのみである。

写真撮影はダラーの指導者、管理人であるマラブーMaraboutによって禁じられていた。幼児も含む子供が暮らす場所としては最悪命に関わるほど不衛生な環境だったので、こっそりスマホで撮りたかった。しかしマラブーは実際こちらの動きを注視していて素人の自分が下手に動くと団体とマラブーの関係に傷がつくとこうして訪問ケアもできなくなるかもしれない。リスクは大きいので辞めておいた。実際、人権団体やジャーナリストによってダラーの現状は告発され、今でも議論が続いているため、あまり公開されるべきではないということをマラブー自身強く意識しているのだろうと思う。

マルティナ曰くマラブー僕らの前では良い顔をしているが、子供たちの前ではノルマを課した物乞いを強制し、達成できなければ体罰を加える虐待の鬼と化するという。確かに見た感じマラブーの対応にはどこかとってつけたような不自然さを感じた。

(参考までにダラーの様子をネットで検索して見つかった画像のうち自分が見て聴いたものに近いものを数点載せておきます)

医療ケアは消毒液をガーゼにつけて塗っていくだけの簡単なもの。主な疾患は疥癬(かいせん)という、ヒゼンダニの寄生によって腫れ上がった皮膚に消毒液を塗っていった。合計で30人ほどの子供の治療を行った。痒みでかきむしられている傷跡に消毒液を塗ると子供は痛そうな声をあげていた。中には腫れが多くなってそれが一塊になって肥大しているものもあった。ダニの寄生による症状は確かにたくさんありそうだと想像できる生活環境だった。これをケアできる環境はダラーには用意されていない。

今日の配給はパンに玉ねぎにソースを絡めて炒めたものを挟んだサンドイッチ。

写真中央上の女性が今日一緒にダラーを訪問したイタリアのマルティナ。彼女は英語を話せないので僕が頑張ってフランス語でコミュニケーションをとる。施設を訪れた子供にハグで挨拶し、悪いことをした子はパワフルな声で呼びつけて注意し、ひどい怪我を負った子供を見ると急に涙ぐむ熱いハートの持ち主である。