HIRO EATS THE EARTH

地球まるごといただきます

世界遺産よりも感覚優先(Atar أطار)

シンゲッティという世界遺産の集落にバスに乗って見に行くとみんなは言う。

対してぼくはキャンプ場に残って作業することにした。

モーリタニアではモロッコと比べると全ての物価が1.5〜2倍くらいになった。パンを一つ買うのに10ウギア=40円。これはモロッコのホブズの3倍近い。それにこの国に入ってからみんなと動きを合わせる流れで、無料野宿ではなく安いホステルやキャンプ場に泊まり宿泊費がかかっている。入国時のビザも手痛かった。こうして最近は出費が嵩んでいたので片道200ウギア=800円のバスに乗るのは憚られた。それに行った先で入場料とか取られそうだし。あとはいつもながら報告作業も溜まっている。というわけで自分は別行動を選んだ。

こんなしょっぱい理由で世界遺産をキャンセルするのはどうかと思ったけど、この日一日ゆっくり過ごしてみて、世界遺産という観光においてはマストだと思われがちな事項をスキップし、何でもない空白の時間を選ぶ自由があることを体感で確認できたことが良かったと感じた。世界遺産ではなく自分の勝利。笑

訪問した場所とか手足を動かして形にした成果とか、そういう、他人に示すことができる要素を自分は「外側」と呼んでいる。これに対して自分の感覚とか思い等、他人に示すことの難しい部分が「内側」。これまでずっと自分は外側を積み重ねていくことを求め続けてきたけれど、そこは本質ではなく、内側を求め続けているだけで良いという流れになってきている。この時、シンゲッティに行くとしたらそれは外側を求めての動きになって内側が疲弊していたかもしれない。

自分の旅では他人に分かりやすく示せるような成果よりもただ内側を、思いつきや気の向くままを、誰にも理解されずとも、つまらぬと思われようとも、追い続けていていれば良い。そう思えてとても心地よさを感じることができた。

この日はイヴァンもぼくと同じ選択をしてゆっくりキャンプ場で過ごしていた。

昨晩はキャンプ場に到着した時、自分達は疲れてしまって車に乗る選択をした一方で100km以上を走り切った僕に「よくやった!ヒーロー!」と明るく迎えてくれた。彼は何となくぼくと波長が合う一緒に居て楽な男だと感じる。彼の作ってくれた二人分のパスタをパンに挟んでいただいた。

夜になってメンバーがポツリポツリと帰ってきた。明日はまた南に向けて走り出す。