HIRO EATS THE EARTH

地球まるごといただきます

優しい人と出会うために困ってる(Boujdour بوجدور)

この居心地の良いガススタンドには結局、一週間も滞在させていただいた。明日からはガススタンドのリーダーのハサンが家族と旅行に行ってしまい、ぼくが滞在するのは都合が悪くなる。ぼくはぼくで同じ場所に一週間立ち止まり、書く作業に行き詰まりを感じたのでちょうど良かった。

「明日でお別れだね〜」という話になり、笑顔だったハサンは急に真剣な顔になって小声で「お金はあるかい?」と尋ねてくれた。ぼくはその時、彼のその一言がよく聞き取れず「え?」とか聞き返していると、20ユーロ=2800円を手渡してくれた。平謝りみたいに感謝を伝えるぼくにハサンは翻訳機で「イスラムでは困っている人を助け歓迎するのはごく当たり前のことだよ」と伝えてくれた。

一週間の滞在で進んだことといえば、投稿を二つ書いたくらいで滞在している間に一週間また書くべき投稿が一つ増える、という感じだった。それでも自分の中ではものを書くということの探求が深まって楽しかった。自分の納得いく書き方や言葉遣いがより明確になり、まだまだ奥深く探求してみたい感じがする。自分が作るものはみんなが喜ぶほど素晴らしいものなのか、誰の目にも止まらぬ拙いものなのか、そこを気にするマインドも少しずつ薄れて、ただ自分の感覚を使っていくだけになっていく感じも持ち始めて、より心地良さのレベルが上がった。結局これからもずっと旅に加えてこうして伝えていく動きはしていくわけで、こちらの進展は個人的に嬉しい。読んでくれる人にも感じられるようになれたら良いと思います。

一ヶ月くらい時間があったら一週間くらいはこうして立ち止まって文字にしていくのが心地良い感じもする。「冒険野郎」だからってずーっと歩きまくっていれば良いわけでもない、外からのレッテルに自分を合わせるのではなく自分の座りが良くなるように調整し続けて、そこにレッテルを貼る。

一週間の間、ハサンも、アブドも、モハメッドも、ドライバーのみんなも、滞在を続けるぼくを嫌な顔ひとつせずに接し続けてくれて毎回お茶やご飯に招いてくれた。あとは彼らはずっとのんびりスマホを見ていたり、アプリで何やらボードゲームに興じていたり、彼らの中で楽しんでいたのだけど、自分は自分で書くべき事がたくさんあって一人忙しく、その感じが丁度よかった。

自分はこういう人たちの優しい姿が一番心に残る。だっていきなり現れた人間をそうやって笑顔で迎え入れるってすごいよマジで。自分が逆の立場だったら絶対にできていない。それを自分よりも若い人たちが自分達の誇りとばかりに当たり前に実行する。そこにぼくはどうしても、なんとも言えない深い尊さを感じる。ぼくはむしろこれを感じるためにこんなに困窮だらけの旅をしているのかもしれないとすら思う。この場所に辿り着くことが出来て本当に良かった。一週間前にお祈りして辿り着いた場所は理想通り、いやそれ以上だった。このガススタンドのみんなには言葉に言い表し切ることのできない大きな感謝の気持ちしかありません。本当にありがとうございました。

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滞在期間中ずっとぼくの寝るマットレスに居着いていた猫氏。

鶏肉のサンドイッチを間食でいただいた。

仕事をしたりスマホを眺めたり談笑したりする合間にお祈りをしているハサン。

何が起こったのかわからないけれど突如戯れ合う男達。

なんとなくその場のみんなでまた集合写真を撮ろうという流れになってちゃんと撮ってみた一枚。

夕飯の支度。これで最後だ。

大勢で囲む最後のガミラ。

名残惜しくて自分から一枚、セルフタイマーをお願いした。

最後の最後まで美味いガミラだった。

翌朝の朝食。当番のアブドが淹れてくれたお茶と一緒に。

最後にメッセージカードを渡すと、アブドはぼくのカードを一枚取ってぼく宛にメッセージを書き残してくれた。

右下の文字はアマズィアが用いるオリジナルの文字、ティフィナグTifinagh文字。この手紙では「タマジクト(アマズィアの言語の名前)」と彼のサインの部分をティフィナグ文字で書いてくれた。アブドはずっと人懐こく、一緒の時間を楽しんでくれた、一切の邪さを感じさせない、印象的な青年だった。

左はスタンドのカフェ担当のおじさん、真ん中はアブド。右がモハメッド。