HIRO EATS THE EARTH

地球まるごといただきます

どこに幸運が隠れているか分からない(Bir Gandouz بئر كندوز→Guerguerat ڭرڭورات مغربية)

ロッコの国境まで到着し、その直前のガススタンドでテント泊することになった。ガススタンドのカフェや売店でいつものようにホブズ(パン)を購入しようとすると売り切れだという。まだ午後の2時前だというのに。。

仕方がないので1kmくらい歩いたところにある国境オフィス手前のマーケットまで買いに行く。そこにいたのはなんだかダラダラした雰囲気のお兄ちゃん。彼はぼくのカメラを見るなり「撮ってくれよ」とジェスチャーするので撮って見せてあげた。

撮れた写真を見せると大層気に入ってくれたようで、連絡先を交換し、後ほどカフェのWi-Fiに繋いで画像データを送ってあげた。すると彼は早速WhatsApp(日本以外では大抵連絡手段に使われるLINEのようなもの)のプロフィール画像に使っていた。

この時、ぼくはイヴァンとぼく二人分の今晩と明日の朝の分のホブズ10枚と水1.5lを2本買おうとしていたのだけど、彼はそれらをタダで譲ってくれた。

最初に訪ねたガススタンドのカフェでは売り切れなんてめんどくさいなあと思っていたけど足を運んだ先では写真を喜ばれお金も払わずたくさんの食料を手にすることができた。

まあ、小さな出来事なのだけど、何かがダメでもそれ故に巡り合える幸運というものは本当にあるということを実感できた一件だった。きっと旅そのものがダメになってしまっても巡り合える幸運というものもまたあるのだろうし、人生そのものがダメになってしまってもまた然り。自分の頭で拵えた尺度なんてものを宇宙は軽々凌駕して遥かに高次元レベルで物事を動かしていく。それを素直に信じていようと思った。

今日もまた薄暗いうちから漕ぎ出す。

「撮ってー!」と頼まれた一枚。こんなちっちゃな子が一日に100km以上もパワフルに自転車を漕いでいる。人間の可能性が自分の中でまた一つ広がる。

今日もまた美しい色に空が染まる。

国境のあるところまであと70km弱

少しだけ遅れをとった二人追いついてきた。ジュリアンが爆音でダンスチューンをかけている。

そしてみんなで踊った。

こんな何もない道中、ただ走っているだけでは気が滅入ってむしろ危ない。みんな馬鹿になる時間が貴重だと感じられたひとときだった。

ジェドが道路脇の砂漠にタイヤを滑らせしまって転倒し、擦り傷をたくさん作っていた。すかさずジュリアンとイヴァンが救急キットでケアにあたった。

そういえば自分は傷を守るための道具を持っていないことに気がついてなんとかしなければと思う。逆に二年半も酷い怪我はなかったことは幸運だ。

応急手当てが済んで再出発。

国境直前のちょっとした建物群のあるところに到着。

またイヴァンが作ってくれたクスクス。

イヴァンはどんどん周りの人に食べ物を与えようとする。見知らぬ人と目が合ってちょっとでも挨拶をすると「食べる?」と招く。

このクスクスはぼくの分でもあるので反射的に心の中で「やめろよイヴァン何誘ってんだよ」と思ってしまうのだけど、彼もこれまでたくさん自転車旅をしてくる中で現地の人からお世話になってきただろうし、ぼく自身こうんな風に自分からオープンマインドに接してくれる人のおかげで良い思いをしてきたので口には出さない。でも旅人が即席で作るものなんて現地の人の食べるものと比べればほとんど貧相なのでやっぱり自分だったら誘わない。実際何人もの人がお誘いをスルーしていた。

自転車で長距離を移動中だというモロッコ人の男性が現れ、イヴァンはやっぱりその人を食卓に招き入れた。

カフェにて、日記をつけていたクリスタは

おじさんからホブズやお茶を提供される。女の子はより現地の人からサービスを受けやすい、と思う。

今日もタジンを注文するジュリアンが気前よく分けてくれた。

手首や肘、顎に擦り傷を作ったけれどすっかり元気なジェド。

さらに夕食時にまたジュリアンが「ヒロ!」と呼び出してくれてチキンを分けてくれた。

この日の野宿風景。明日でモロッコ西サハラは終わり、モーリタニアの旅が始まる。