モーリタニア・イスラム共和国が正式名称。
しんどかった。のっけからしんどかった。
入国するのに30日間の旅行ビザ55ユーロ=7700円。自分はこれを550ディルハムで支払えると思っていた。実際にモーリタニアに入った人に尋ねると支払うことができたというので信用していたのだけど、オフィスでは見事に突っぱねられた。ここではユーロ紙幣しか受け付けていない。
その場にいる明らかにぼったくりをかましてくれそうな雰囲気の無表情な男達に頼るしかない。案の定、55ユーロのために630ディルハムを支払う。1ユーロはおよそ11ディルハムだから70ディルハム=980円も手数料を持っていかれることになった。この状況になるとぼくのメンタルはものすごくダウンする。
現地の人たちはここでもフランス語を話すのでジュリアンが注意深く通訳してくれた、ジュリアンは更にぼくに5ユーロを渡してくれた。お金の助けもそうだけど、彼に警戒した表情をさせるのも申し訳なく思った。彼はメンバーの中でいつも一番明るく笑って盛り上げる好漢なのに。
建物、車、道路の整備度合い。全ての質が一気に落ちた。道路途中の検問の警察官の詰所は藁で編まれたものや壊れて中が剥き出しになっているコンクリート。剥き出しの砂の上に絨毯を敷いて座っている。追い越す車の窓から腕を伸ばして立てた中指を見せつけてくる人。町中ではクラクションがたくさん鳴り響く。行き交う車は壊れかけ。おそらく古い車種故か排気ガスの匂いが強く、他にも何かの腐臭が混じっている。メインロード以外はでこぼこの砂地。
わかりやすくお金を求めてくる人々。なかなか美味い英語で「私の両親も家族も貧しいから助けてくれ」と自転車や荷物に触って擦り寄ってくる人もいた。子供達は旅行者を見つけると付いてきてずっとお金を要求してくる。それでいて物価はモロッコと比較するとどれも1.5〜2倍くらいに跳ね上がっていた。
タフな国に入ったなと思った。イヴァンの話によればモーリタニアは世界で5番目に観光客が少ない国だそうだ。
この日はテントを張る場所を見つける余地もなく、ホステルの屋上でテントを張ってお安く泊まらせていただくことになった。とても久しぶりに宿泊費を払った。国境での一件やリアルな発展途上国の様相に疲れた。眠って落ち着いて、体勢を立て直そう。
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出発前のイヴァンは体調と気分が優れず、自転車ではなくヒッチハイクに切り替えようかと悩んでいたところだったけれどクリスタが「コイントスで決めよ」と占った。結局サイクリング続行。
出発。
モロッコの国境。
モロッコの出国スタンプ。滞在日数は82日となった。語れば長くなる思い出がいっぱいだ。
モロッコの国境とモーリタニアの国境の間には5kmほどの距離があり、ここは現状、どこにも属さない場所となっている。
振り返ってモロッコ国境。
モーリタニアの国境が近づくと発展度合いを象徴するかのようにコンクリートの道が途切れた。
揺れまくるのでもはや手押しで進んだ。
モーリタニア国境事務所。
モーリタニアに入国し、振り返って国境を撮った。
とりあえず近くの空き地で休憩。
落としたトマトに齧り付くネズミ。
世界一長い列車が通る線路。
モーリタニアでは頻繁に警察官に呼び止められパスポートチェックが行われる。モロッコではスマホで本人証明のページの写真を撮って本部に送信するだけなので手続きが早かったのだが、モーリタニアではそれができないので手書きで情報を書き取ることになり時間がかかる。こちらが事前にパスポートのコピー、もしくは情報を書きまとめた紙切れを持っていると手続きがスムーズである。パスポートを持っているだけだと返してもらうまでに少し時間をとられることになる。
本日泊まるヌアディブNouadhibouの町に入った。
宿に荷物を置き、3軒くらい両替ができる場所を巡って両替を済ませた。モーリタニアの通貨はウギア。1ウギア=3.6円。
何かを食べに行く。
見つけたレストラン。
ものすごく簡素な内装。
手を洗うための水道はなく、ポットに水を溜めて流し、それを桶で受ける
チキンとポテトのセット。100ウギア=360円
店主の女性は入った瞬間本当にだるそうにしていて「大丈夫かこいつ」と思った、出された食事を食べたジュリアンが「美味いよ!」とサムズアップを送って笑顔になって一緒に写真を頼んできたりした。こちらから笑顔で働きかけるのは大事なことだと何気ない瞬間に思わされる。
夜の町、子供が多くうろついていてこんな風にずっと近くに立ってじーっとこちらを見つめて物乞いをする。「ダメよ」と断っても食い下がってくる。
集ったメンバーでホステルの談話室に集まり、明日に向けて話し合い。
テントを張った屋上。
お湯の出ないシャワーで洗濯も済ませた。これで一泊200ウギア=720円だったけれど、5人で泊まるのでディスカウントを提案し、一人160ウギア=576円に値下げをしてもらった。
明日はモーリタニア名物、世界一長い列車に乗ります。