HIRO EATS THE EARTH

地球まるごといただきます

19歳のアマズィア自転車旅人(El Marsa→Lamsid لمسيد)

この日印象的な出会いはガソリンスタンドに置いてあったこちらの自転車から。この古めの自転車と出来合いのものではないアイテムをかき集めている感じに唆られた。

自転車の主に会ってみようと思って待っていると、やってきたのはやっぱり爽やかな青年だった。英語が話せる。名前をジャファルJaafarと言った。アマズィア(ベルベル人)の19歳の学生である。

この先のボジュドールBoujdourからタンタンTantanまで(ぼくとは反対方向)およそ500kmの短期旅をしているところだそうだ。

ジャファルにモロッコの感想尋ねられ「もう良い人いっぱいだよ〜アマズィアの人にはお世話になったよ〜」と伝えると、ジャファルは嬉しそうに「そうそう、モロッコ人は世界で一番ウェルカムな人たちだよ」と言っていた。そして少し真剣な面持ちになって「でもみんな貧困に苦しんでいるんだ」と漏らしていたのが印象的だった。

ジャファルの故郷はぼくも通過したタータTataであり、もしタータに来ることがあったらお助けするかメッセージをくれと言っていた。日本に来ても同じだぞ、と返した。ジャファルとにかく好青年だった。間違いなく良いやつだった。写真に写ったこの顔のまま、目がキラキラしている。

これからきっともっと世界に向けて旅を続けたりするのだろうか、それとも別の形か、いずれにしても彼のような空気感の人間であればたくさんの人と手を繋いでいけるのだろうなと思った。

彼はガソリンスタンドのモスクの隣で眠ったらしい。モスクのおじさんからジェラバGelabaというたくさんのモロッコ人が来ている服を寝巻きにしていた。連絡先を交換して固く握手をしてこの顔のまんま「良い旅を」と伝えてくれた。彼とはいずれ世界のどこかでまた会えそうで楽しみだ。

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ぼくの育ってきた社会やヨーロッパ圏では12月24日はクリスマスイブということであれこれお祝い的な何かをするものだということになっている。ぼくは旅を始めてから今回で3度目のクリスマスイブを迎える。1度目はトルコ、2度目はボスニア・ヘルツェゴビナボスニア圏、そして3度目の今回は西サハラ。全てがイスラーム圏である。そのイスラーム圏においてクリスマスはなんでもありません。平常運行、平熱です。日本やヨーロッパ圏の友達がSNSでメリークリスマスしているのを見ながら身の回りの平熱感を味わう。

それはクリスマスを祝う人たちからは残念なことに思われるかもしれませんが、当の私はめちゃくちゃ面白がっています。もともと自分にとってのクリスマスの喜びは子供の頃に両親サンタからプレゼントをもらうこととケーキを食べることくらい。大人になってからはもちろんそれらはなくなり、世の中のテンションについていくのも疲れるのでもうすでにクリスマスはどうでも良くなっている、という下地があるからかもしれない。もともと平熱が好き、それに社会もまた平熱で心地良いです。

引き続き作業をしたいけれど、ここまで来ると町と町の間は160km以上(1日では到達できない距離)離れている。その間にあるガソリンスタンドにはネットを取れそうなカフェもない。というわけで今日はとりあえず移動だと思って進む。泊まる予定の場所にカフェがあることを祈って。ちなみに寝場所の心配はほとんどない。こういう何もないところの人は協力的な人が多い。

周りの風景は何もない。リン鉱石(ちょっと調べた)や漁業などの資源採掘をしている様子を窺える。

山羊

輸送のためと思しきトラックはたくさん通る。こんな風にポツリとしたガソリンスタンドは所々あるが、カフェはない。そこで給油だけ済ませていける。

ボジュドゥールBoujdourという県にはいる。

海と砂漠

何もない地平に日が落ちる

あそこのテントには遊牧民が暮らすのだろうか。

紫の空に小さくムスリムの象徴、三日月が浮かんでいる。

カフェとレストランもある(Wi-Fiはやっぱりなかった)ガソリンスタンドで寝る場所を尋ねるとスタッフは向かいのミリタリーオフィスに尋ねると良いと、アドバイスをくれた。実際にオフィスに勤務されている方もその場にいて彼らにテントを置ける場所を案内していただいた。

壁に囲まれ風も凌げる平坦なコンクリートの上。自分好みの場所になりました。奥に見えるモスクがガソリンスタンドの敷地。

テントの中でクスクスとレンズ豆を一緒に煮込んでケチャップをかけてホブズ(パン)と一緒に食べる。美味いです私的に。

翌日、ガススタンドでホブズだけ補充して出発しようかと思ったら、テーブルの上にたくさんのホブズやオリーブオイルやアムルAmlou、お茶の食べ飲み残しが。長距離バスの観光客たちがここで朝食をとっていった直後だったのだ。すかさず小皿を集めて自分のホブズにつけていただいた。

長距離バスが停まるガソリンスタンドや休憩所はこういうチャンスがあるな。さらにそれを見ていた店員さんが追加のホブズやコーヒーを持ってきてくださった。ありがとうと伝えたら微笑んでいた。こういう寛容さは日本を旅していてもなかなか無いだろうなあと思う。

さらには通りがかりの人たちが何人かぼくに話しかけてきて、おやつを買ってくれたり、連絡先を教えてくれて近くに来たら訪ねておいでと言ってくれたり、色々な優しさに触れて嬉しくなった。

ガソリンスタンドは人の流れが活発で、人の雰囲気は爽やかになる印象がある。人と人とが関わるハードルが下がっている感じがする。そこが心地よいなあと、ガソリンスタンドヘビーユーザーは思うのです。