HIRO EATS THE EARTH

地球まるごといただきます

気さくなメカニックとタジン鍋を囲む(Igiouaz→Tagant)

地図で泊まり先として目星をつけていたガソリンスタンドはずいぶん古いshell。ここにはネット環境なんてないかなあ、、、

と思ったら、あった。すかさず寝る場所も相談する。

野球帽を被った、笑顔で気の良い雰囲気のおじさんがやってきた。車やバイクをいじるときについたであろう黒い油汚れが付いている、アニメにも出てきそうな気の良いメカニックと言う風態。名前はアフメットAhmetさん。

アフメットさんはフランス語がバリバリなのだが、生憎ぼくはうっすらぼんやりとした話のアウトラインくらいしか理解できない(モロッコ旅の中でちょっとだけ上手くなった)。アフメットさんはガソリンスタンドの向かいの駐車場にテントを張れる。と教えてくれた。見た感じあまり快適ではなさそうだけれど、寝る前までパソコンに向かえるならこれも許容範囲だと思った。

アフメットさんは「何か食べるか?」と言ってくれたので素直にお願いしてしばらくパソコンに向かっていたら、どこからか差し入れを持ってきていただいた。

さらに、ぼくは「ホブズ(パン)ありませんか?」と尋ねると、「この後、仲間と一緒にタジン食べる?」とまでお誘いいただいた。それは、最高です!!!

ウキウキした気持ちで作業を続けている間、ちょいちょい通りかかるアフメットさんは笑顔とサムズアップで「セ・ボン?(大丈夫?)」と尋ねてくれたり、お茶を持ってきてくれたりした。こういった気の良い親切な人が近くにいる、という事が、他人の気分の影響を受けやすい自分にとってはとても大きい。心から安心した気持ちで過ごすことができる。手渡しでいただくもの以上のものを受け取っている。

タジンの準備をしてくれるアフメッドさんと同僚の人。

タジンは近所のタジンレストランからテイクアウトしてきたようだ。写真を撮り損ねたけれど、左手でタジンの底を支えながら肩に担ぎ、右手に人数分のホブズを持って歩くアフメッドさんのその絵面にモロッコの日常を感じて印象に残っている。

3人で狭い従業員用の控室でいただきます。

もちろん美味しい!今回は野菜が多めに入っていて嬉しかった!

アフメッドさんはフランス語でとにかく自分の話をしてくる。アフメッドさんもモロッコ人の大多数と同じく酒は全く飲んでいないのにこのテンションは酔っ払ったおじさんのそれに似ている。に、苦手だあ〜。

常に自分の中の極貧フランス語力を駆使して、彼の話に食らいついた。アフメッドさんはヨーロッパの、主に西側諸国を転々として(多分車の)メカニックとして勤務していたそうだ。そういう経験があってフランス語は流暢だし、こうして異国の旅人にも心が開けているのかなと想像した。

最初は駐車場にテントを張れば良いという話になったが、結局、アフメッドさんの計らいで、ガソリンスタンドのお祈りスペースにマットレス敷かせていただけることになった。アフメットさんはどこからか毛布と枕を持ってきて使わせてくれた。おかげさまで今日はテント要らず。

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翌早朝。怒鳴り声が響き渡った。

何事かと起き上がっているとガススタンドのスタッフがお祈り部屋のドアから顔を出して落ち着くようにジェスチャーしてくれた。

声の主はこのガソリンスタンドのオーナーさんだった。ぼくをこのお祈り部屋に寝かせたことに対して大層ご立腹だったらしい。アフメッドさんはぼくのせいで上長に怒られてしまう形となった。これは申し訳ない。

アフメッドさんは仕方なさそうに「申し訳ないが、君は行かなければならない」と伝えてきた。が、「朝ご飯を近所のカフェで食べていきなよ」と言ってくれた。ぼくのせいであんな剣幕で怒られたのに。アフメットさんの懐の大きさとタフネスに救われる思いだった。

タジンを返しにいくアフメットさんの写真を撮らせていただいた。

カフェからはホブズとお茶。そしてマーケットで買ったオリーブオイルのボトルから小皿二つに注いでくれた。ありがとうございました😊

それでアフメットさんは早々帰って行った。

ちょうどその時、カフェの近くの席に座っていたシティな雰囲気の男性が英語で話しかけてきて旅の話になった。アリAliという名前だった。彼は普段はフランスのパリ近郊で仕事をしていて、今はちょっとした用事でここに来ているという。そのアリから旅の応援として200ディルハム=2800円をスッと差し出していただいた。この所作の軽快さは確かに西ヨーロッパのそれを彷彿とさせた。ぼくは平謝りする人みたいに頭を下げながら感謝を伝えて、一緒に写真を撮らせてもらった(右から2番目がアリ)。

アフメットさんの計らいはこのアリからの応援まで含めて、だったのかもしれない。アリに対してももちろんだし、この全ての流れとほくほくした出会いに嬉しくなった。

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<道中の写真>

急にぼくを呼び止めるおじさん。サイクリスト。かなり軽装だ。イドリスIdrisさんという、フランス人だった。英語も堪能だった。

この軽装と自転車の古さ。ぼくのような長期旅行じゃないにしても玄人感を感じる。

イドリスさんは自由な旅暮らしこそ人間の本来の在り方であり、今のソサイエティに蔓延るファッキン・ポリティックスには絶対従わない、ヒッピー気質の強い人だった。頻繁に自転車旅をしているらしく、行ってきた場所の名前をこんなふうにバッグに書いていた。行ってきた国のステッカーならよく見るけど、これはこれで素晴らしいな。

イドリスさんは道中で色々サイクリストを見かけるのを希望に思っていて、いつか彼らがコミュニティを築き上げ、既存の社会とは別の選択肢を提示できるようになるだろうと大局的な予言を披露してくれた。うむ、それも面白いな!ぼくはコミュニティになじめるか分からないけれど。笑

あとはこの先の道順や、水分のキープを怠るなとか、モロッコ人は良い人たちだぞとか、ぼくもすでに知っていることをアドバイスしてくれた。旅人同士はそのくらいお節介な方が良いだろう。何よりこうして旅をしている人を目の当たりにするだけで勇気が湧いてくる。イドリスさん、お気をつけて!

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