HIRO EATS THE EARTH

地球まるごといただきます

爽やか警察官に助けていただく(Tizgui تيزغي→Igiouaz)

エストルとイネスとの3人旅はとても楽しかったので一人になるのが寂しく感じられるかな〜と一瞬思ったけど、すぐに切り替わった。これが自分の平常運行、本来の在り方。また行く先で素晴らしい人と出会って楽しめば良い。こうやってすんなり切り替えられるようになったあたり、旅慣れを感じる。

ここ最近、農家さんと良い出会いが多いので今晩も道路から見かけた農家さんに頼ろうと立ち寄ったら中にいた青年たちに「この先の村に行けばいいよ」と平熱であしらわれたのでした。はい。村に行きます。

ゆっくり村に到着し、さあ、どなたに声をかけようかなあ〜とあたりを見回していると、後ろからバイクが追いついてきて、乗っていた爽やかな雰囲気のおじさんに「ボンジュール(モロッコ人にとって外国人対応と言えばフランス語)!」と声をかけられた。同時に右手がこちらに差し出されている。握手を交わした。

彼の名前はブラヒムBrahimさんと言った。

すぐに翻訳文を見せると、ブラヒムさんはガッテン承知という感じで「パスポートを見せて」と言ってきた。そこで「この人は私服だけど警察官なんだな」と理解した。ブラヒムさんは撮ったパスポートの写真をどこかに送り、仲間に電話とかけると「こっちについておいで」とバイクを村の中の方に走らせた。

案内してくれたのは村の中のモスク。そこの空き部屋を使わせてくれることになった。電気が点くし、充電もできる。自分にとってはナイスな環境だった。

それから「お腹減っちゃったんだけどマーケットあります?」と尋ねると、ブラヒムさんは近所の小さなマーケットで色々と見繕ってくれた。

ホブズ(パン)に菓子パンにミルクに鰯の缶詰にお茶。わあぁ〜〜〜こりゃもう至れり尽くせりだ。そういえばモロッコの人はよくミルクを推奨してくるね。

電気が通じるのでオフラインでじっくり作業をさせていただいた。部屋の中はとても静かだったのでよく集中できた。モスクだったので定期的に古いスピーカーから流れるおじさんの声で「アッラーアクバル(アッラーは最も偉大である)・・・」に始まる、イスラーム圏ならどこでも聴けるお祈り前の放送が聞こえてきた。
・・・

翌朝、9時ごろ、ブラヒムさんがコーヒーとホブズ(パン)にチーズを持ってドアの外から声をかけてきた。ありがとうございまーす!

それから10時に始まる彼の出勤に合わせて出発することに。何か特別なやりとりをした訳ではないのだけど、すごく爽やかな雰囲気が終始滲み出ていたのが印象的だったブラヒムさんであった。写真では慈しみ深い表情なのだけど、もっとスポーツマンのような笑顔とサムズアップが印象的な人だった。

それから、村外れの最寄りのカフェまで3kmくらい、ゆっくり走るぼくの後ろをゆっくりとバイクでついてくる。ぼくの安全を守ろうとしてくれているのか分からなかったけれどブラヒムさんが村はずれのカフェに立ち寄る形でお別れした。

別れる前にブラヒムさんはぼくに近づいてきて少しだけ意思疎通のできたスペイン語で「Muchas Gracias(ありがとう)」と言ってくれた。

そりゃこっちのセリフです。と、思いつつ、自分はもしかするとブラヒムさんにとって何か一つの希望のようなものを思わせたのかもしれないと思った。本当はブラヒムさんもこんな風に旅がしたかったのかもしれない。ただ困っている人を助けると言う自分の職務をまっとうした事が嬉しかったのかもしれない。まあ何を想像しようが自分の創作の域を出ないのだけど、自分の旅する姿が誰かに希望を与えるものなのであれば、人生うまくやれなくても良い人間を選んで生きている今でも、それは嬉しいことである。