HIRO EATS THE EARTH

地球まるごといただきます

スペインの馬使いと3人旅(Akka أقا→Tizgui تيزغي)

スペインからの自転車旅人との出会いから別れまでのおよそ24時間3人旅の様子。長い記事になりました。

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今日はものすごい突風だ。

もう、平坦な道でも手押しで進むしかない。今日はちょっとしか進めなさそう。

と、その時、ぼくの近くに車が停車し。

中のドライバーさんが途中の村まで載せていってくれると申し出てくれた!!

高いトラックの荷台に二人で頑張って自転車を載せて。

載った!自転車が倒れないように自分も荷台に乗ります。

普段の自分からすると超速で走るトラック。強風の中、自分も自転車も無事でいられるようにするだけで精一杯だった。。笑

動画でちょっとだけ雰囲気を。

10分くらい後、目的地の村近くに到着して降ろしてもらった。ぼくはもう自転車が倒れて壊れないように必死だったので、ドライバーさんの名前を尋ねる余裕も写真を撮らせてもらう余裕もなかった。こうしてドライバーさんの方から手を差し伸べてもらえるのはとても助かるし嬉しい。ありがとうございました。

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そして、丁度、本当に丁度、降ろしてもらったポイントに、バイクパッカー(自転車旅人)が二人、強風に向かって自転車を押していた。男女のカップルだ。自転車をトラックから降ろしてもらう時に男性は咄嗟に手伝ってくれた。

見たところ自分よりも10〜20歳くらい年上。スペインから来たそうだ。二人もこの強風に苦戦していて半日かけて14kmしか進めていないと言っていた。進行方向は同じなのでとりあえず3人で一緒に進むことにした。

強風すぎて今日は進むのに適した日ではない。

とりあえずたどり着いた村でお茶するために休むことに。

旅行者相手に自らすすんでモロッコ流のお茶の淹れ方を披露する店員さん。ポットを高く上げてコップに注ごうとするも、強風に吹かれてお茶はコップに入らずボチョボチョこぼれていった。そんなミスを二度。もう取り替えたほうが、、。笑

男性はエストルHector、女性はイネスInesと言った。

エストルはスペインの北部の山岳地域アストゥリアス地方(自分も通った)で「カバルガンドスエニョスCabalgandosueños」という牧場を営んでいて、馬や山羊を飼いながら旅行者に自然体験ツアーの提供を行なったりしているそうだ。なんでもそこでは動物たちのケアを丁寧に行う人と自然の共生、優しい暮らしを実践しているのだとか。

イネスはクロアチアのプーラ出身で、エストルの牧場に訪れてからその生き方に惚れ込んで、結婚はせずカップルとして一緒に生活をしているそうだ。

二人とも前パートナーとの子供もいるという。人生経験の豊富さが伺えた。

彼らの農場ではたくさんのボランティアを受け入れているそうなので、ぜひ自分も行ってみたいと思った。二人の醸し出す雰囲気とほんの少しだけ教えてもらった情報だけで「オレの大好物キタ」と直感した。

彼らはこのモロッコの旅はあと数週間で終って飛行機で家に帰る予定とのこと。牧場での生活がベースにあり、その上での旅である。

お店でしばし休んだ後、マーケットで食べ物を買って出発。この後も二人と同行させてもらうことにした。

普段は山の中で馬と共に生活をしている二人の関心、目の付け所はもちろんぼくと全然違う。農場や面白い地形を見つけては立ち止まって二人で何かを話している。スペイン語なので何を言っているのかは1%くらいしか理解できないのだけど、良い勉強の機会だと思える。ダンマリしながら、彼らの会話から忘れかけていた単語とか「今の動詞は過去分詞形だな」とか心の中で確認して楽しんだ。

自分は自分でサイクリストをかっこよく撮るトライをしてみる。

途中休憩。ノルディンからいただいたデーツを彼らに食べていただきました。

「モロッコはどの場所が良かった?」と尋ねられて、特に思い付かず景色の映えるメルズーガ、ととりあえず答えたけれど、彼らは「ツーリスティックすぎじゃない?」と怪訝な顔をした。

彼らの旅もまたとにかくノープラン。ぼくみたいに大きな道路ではなく、そこから外れる小さめのローカルな道を選んで、ゆっくり進んでいく。そんな彼らの推しは途中、色々な色のついた美しい山がある地域だったいう。

ぼくは本音を言うと、このブログでも書いたようにメルズーガでは嫌な思い出しかなく、自分の旅のやり方を改めなければならないなあと思った。なんとなく有名な場所に行ってなんとなくここが良かったと人に伝える。それは自分のやりたいことではない。彼らのようにもっと自分にとっての萌えを追求できるくらいになりたい。自分と似たような嗜好の旅人もちゃんといるんだなということが確認できて心強かった。インスピレーションを得た。

エストルの自転車のタイヤに棘が刺さり、パンク。二人でいると修理も楽で良いね。

二人の現地の人たちへの挨拶の仕方ひとつとっても印象深い。

二人とも自分から見るととても明るく気さくな印象だ。ドライバーにも手を振る。人を見かければ「サラーム」と開けた大きな声で挨拶する。ぼくはなんだかんだ内気なのでボソボソした声で挨拶しながら会釈したり手を上げたりするくらいである。

もっと心身ともにオープンにして関わって行って良いんだなあとインスピレーション。

日が暮れる頃、心配してくれたドライバーさん。目的地が違うのでお断りしたけれど、心遣いが嬉しい。ありがとう!

結局、道路脇の野で野宿をすることに。普段自分一人の時には選ばない野宿ポイントだけど、誰かと一緒なら心強く楽しみですらある。

テントを張る前に奥の方に盛り上がった丘に登るエストルについて行った。ただ道路を走っている時に見たのと似たような景色が、さらに遠くまで広がっていた。

キャンプの準備。

夕食は彼らが焚き火でパスタを作ってくれた。そこらじゅうから木の枝を集めて石をちょっと組むだけで炉が作れる。簡単なものだなあ。インスピレーション。

作ってくれたのはトマトソースパスタ。シンプルだけどワクワクしてくる。そしてとんでもなく美味い。それがキャンプ飯。

これをホブズ(パン)に挟んでいただいた。くおおおぉぉぉー!無限に食べられる!!

そしてゆっくりと眺めたのは満点の星空。今日は本当にいつもよりもたくさん見えている気がした。砂の地面の上。静かで真っ暗で満点の星空。遊牧民ってこういう夜を過ごしているんだなあ。きっと砂漠のど真ん中にいる時はもっと静かに違いない。

幸いなことにいつも動いてくれない広角レンズもこの日は機嫌が良くて撮影できた。

写真下の方でちょこっと光っているのが二つのテントと焚き火の残り火。
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翌朝、エストルがカフェティエラでコーヒーを淹れてくれた。

ゆで卵もお裾分けいただいた。ありがとう〜!

自分の牧場のSNS運営も積極的にやっていて、今回の旅動画も日々アップロードしているとのこと。近くにいたラクダを見つけ、近づいて撮影していた。

ラクダの糞を手に取って何かを解説しているエストル。

出発。今日も二人の会話を聴きながら

そして写真を撮らせてもらいながら進んだ。

エストルはノマドのテントを発見して立ち止まった。

ぼくにも遠慮なくスペイン語で話してくるエストルは解説をしてくれた。超絶必死にリスニングしたことをまとめると、ノマドの中にはナイジェリアから移動している難民もいて、季節に応じてどんどん北上してくるらしい。

ナイジェリアってここだからね。どんだけの距離。。!

彼らの多くはあまり外部の人と関わりたがらない傾向にあるそうで、エストルとイネスはもちろん交流したいと思っているのだけどなかなか難しいそうだ。「彼らの歴史はとても興味深いよ」とエストルは楽しそうだった。

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途中、水がなくなったので民家が見えてきた時にそこでいただこうとイネスが提案した。これもまた自分一人では思い至らなかったことだ。

一件の農家さんと思しきお宅の近くにいって「サラーム・アレイクム!」と声を上げると老夫婦の奥さんが出てきた。

エストルとイネスがスペイン語でバリバリ要件を伝えていて通用するのかなあと思って見ていると、奥さんはするすると空気で察してくれて、すぐに水を差し出してくれた。

この地域には綺麗な地下水が通っていて、太陽光発電によって機械で水を汲み上げることができる。土でできた建物を路上から見ているだけだとわからない生活スタイルだった。

それから奥さんはぼくらを家の中に招き入れてくれた。中では旦那さんが座って映りの古いテレビを見ていた。奥さんは今に座らせてくれてお茶と食べ物をたくさん用意してくださった。

アマズィアの慣習を実感する。壊れた家具が置きっぱなしになっている。家の壁がところどころ壊れている。蝿がたくさん飛んでいる。家の様子は見るからにお世辞にも裕福とは言えない暮らしが想像できる。でも、旅人が訪ねてきたら、まるでそうすることが当たり前であるかのように惜しみなく施しをする。言葉なんか通じなくてもジェスチャーで「飲みなさい、食べなさい」。その様子に尊さを感じた。

自分一人だと遠慮なく全ていただいてしまっていたところだけれど、彼らの生活を気遣ったエストルとイネスに習って自分も遠慮した。

老夫婦のお宅では山羊を何十匹か飼っていて、同業者であるエストルとイネスはそこを起点にいろいろ話をしていた。どんどんスペイン語であれこれ尋ねているのだけどやっぱりなんとなく通じている風に見えるのがすごかった。

老夫婦の写真を撮らせていただきたかったけれどNG。やっぱりアマズィア(ベルベル人)には写真は嫌われる。旦那さんの持っていたムスリムがお祈りする時の道具の写真を撮らせていただいた。

思わぬおもてなしは印象深かったです。大変お世話になりました!

それから分かれ道にある道路脇のモニュメント近くで休憩。

エストルとイネスはよくお腹が空くそうで、何度休憩して間食していた。自分はあまり食べ物を持っていないので遠慮していると必ず毎回「食べろ食べろ」と強めに誘ってくれた。こうやって惜しみなく食べ物を分け与える感じに熟練さを感じる。自分も将来こんな風になるのだとしたら全然オッケーだ。きっと苦労もたくさんあるだろうけれど。

食べ終わって、別々の道に分かれた。ここまで全部ご馳走していただいたし、いろいろなことを教えてもらったし、何より彼らから漂うナチュラルな雰囲気に感化されまくって心地よかった。久々に良い人と一緒に旅をするのもすごく面白かった。ありがとう!

そして彼らと出会わせてくれた最初のドライバーさんにも改めて感謝である。突風だったり、これまでの選択だったり、一つ一つがずれていたらこうして出会っていなかった。ならばこれまでの全てが良かった。良かったと思えることも悪かったと思えることもなんでもないことも全て。それを分かりやすく実感するチャンスが多いのは旅の良いところだと思う。

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おまけ。

彼らの牧場のFacebookページの投稿に出演したの巻。動画の中でぼくが言っている「De puta madre」は英語で言うところの「Fucking mother」、要するにスラングです。汚い言葉故にそれが転じて「最高」と言う意味になったものです。キャンプ中にエストルが教えてくれました。投稿文に「ご飯いっぱい食られた」的なことを書かれている。。

現在はFacebookページが一番アクティブなようです。

彼らのウェブサイトはは英語、フランス語、スペイン語を表示させることができるようです。サイトの上部にはFacebookInstagramYouTubeのアイコンがあり、そこからジャンプができるようです。