HIRO EATS THE EARTH

地球まるごといただきます

未熟で、間違えても、護られる(Tissint تيسينت→Tata طاطا)

もう夜の10時。すっかり暗くなっている中、ぼくは作業したカフェのおじさんが教えてくれた廃屋の前でテントの準備をしていた。

すると、それを見ていた男性が「ノー、ノー、ホテル、ホテル」と言ってくる。頑張って単語レベルのフランス語で「お金がないからここでキャンプをするよ」と伝えても男性はなお主張してくる。ここは危ないということらしい。この場所で大丈夫であることを地元の人から聴いたのでぼくはぼくで自信があった。

「ホテル代は50ディルハム=700円だから安いもんだよ」と言われる。そう。そうだ。確かに安い。普通なら最低倍はするだろうな。

自分の長期計画を考慮するとそれすらできるだけ避けたい。50ディルハムあればホブズ(パン)が25〜50枚も買える。それで1ヶ月くらいは生き延びることができる。

「ごめん、ぼくは本当に長旅だからそれでも野宿の方が良い」となんとか伝えるとついに男性は「俺が支払うよ」とジェスチャーで伝えてくれた。その途端がめつい僕は手のひらを返して彼に従うことにした。

どうやら彼は本当に心から心配してくれていたようである。

彼は言葉が通じないので、英語を話せるお仲間を電話で呼び出した。

若くて英語の話せる青年。名前をノルディンNordinと言った。握手をしてノルディンは「はじめまして」と日本語でご挨拶してくれた。彼について行ってホテルまで。モロッコで初めてホテルに泊まる。

更に、ノルディンは荷物を置いた後に夕食に連れ出してくれた。町外れの小さなレストランへ。

大きめの釜があり、ノルディン曰く、アマズィア(ベルベル人)の伝統スタイルをモチーフにしているということだった。

釜の中ではピザを焼いていた。

ノルディンは我々の夕食にケバブ(と呼ぶんだそうです)を注文してくれた。

肉だー!滅多に食べられない!いただきます!!

ノルディン(写真真ん中)とその友達(写真右)と一緒に

ノルディンはこの町の内務省(Interior Instituteと言っていた)に勤めていて、最初に僕に声をかけてくれた男性は同僚であるとのことだった。警察とはまた違う組織であるが町中のパトロールがお仕事の一環らしい。発声の感じや表情や会話のリズムから思慮深い印象が伝わってくる。ノルディンはこれまで出会ってきたモロッコ人の中でも一番に日本のことに詳しくて、日本と中国、台湾の外交の問題について質問され、ぼくはたじろいだ。

ノルディンは元々アガディールAgadirというこの付近にある大都市の出身で、そこから仕事の配属でこの町、タータTataに住んでいる。大都市くらい人がたくさんいる方が好きで、この静けさは性に合わないと言っていた。

肉を完食した後ノルディンは別のパスタ料理まで注文してくれた。「君はたくさんエネルギーを使うだろうから」と気遣ってくれてのことだった。

更にノルディンはぼくがゆっくり食べている間、「ここに居てね」と自身の車を走らせしばらくどこかに行った後、再び現れて、プラスチックバケツいっぱいのデーツ(ナツメヤシ)を持ってきてくれた。

でかい!ずっしり!2kgくらいあるんじゃないかな。デーツは栄養価が高くてこれだけで1週間近く食べ物には苦労しない気がする。ありがたい!

余談ですが翌日にはデーツのイメージショットを撮ってみました。

漫画大好きでいつか日本にも行ってみたいと言っていたノルディン。その時には何か手助けができればなあと思う。

最初に声をかけてくれた男性にも大感謝である。モハメッドMohammedさんだそうだ。

自分は最初、廃屋の前でテントを張るしかないという頭になっていて「ホテル」と薦めてくる彼の意見を突っぱねていた。それでも彼はぼくのことを見捨てずしつこく声をかけてくれた。ぼくは自分の旅経験から「人々は異国の汚い旅人なんて放っておくものである」という固定観念にはまっていて、目の前の親切な人間のことも「どうせ俺の邪魔をしているんだろう」と判断して邪険に扱うような態度をとってしまった。

こんな風に自分から厳しく殺伐とした世界観に入り込んでしまうことはよくある。そういう時、自分の心のコントロールはまだまだ未熟なものであると省みる。

が、それでもこうして守ってくれる人が現れるあたり、本当に大きな力に守ってもらっているなあと、自分の小ささ、ご加護の大きさを改めて実感した。

久々のシャワーと石鹸による服の洗濯。およそ2週間ぶりだ。眠くなるまで作業して大きなベッドに倒れ込んだ。

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<写真>

ノマドさんのテントが道路から離れたところにぽつりと見える。訪問したい気がするけど訪問していいものかどうか。

本日も道路脇にラクダ。

こちらのラクダ氏は食事中。近づいても平然としていたので撮らせてもらった。

にしても彼が食べているこれさあ。

トゲが凄すぎるけど!

もうお構いなしにボリボリボリボリ食べてるよ。すげええぇぇ、こんなもん食べてるんだ。ラクダ氏。

1分ぐらいの動画も載せました。後半のボリボリ音を聴いてほしい。

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今日ものんびり道路を横断するラクダ氏。

今日の宿泊地、タータTata到着。