日が沈んだ頃にたどり着いた集落のような場所はゴーストタウンじゃないかと思ってしまうくらい人がいるかどうか怪しかった。とはいえ近くにはもう人が住んでいると思しき場所もないので、今日はここの誰もいない空き家の壁際で風をやり過ごしながら野宿をするかなとも思った。
近づいて行ったら人が見えた。ちゃんと人が住んでいる(失礼)。ノロノロ自転車を押して歩き、番犬に吠えられるので、目立った。
家に近づくと家主と思しき男性が笑顔で迎えてくれた。フランス語とドイツ語が話せるすごい人だったけれど、ぼくがどちらも無理なので翻訳文を見せるとすぐに家のガレージに迎え入れてくれた。
丁度、家の壁のペンキ塗りの仕事の人が仕事終わりのお食事中で、自分もそこに加わらせていただいて落ち着いた。ホブズ(パン)とハチミツとオリーブの実。
迎え入れてくれた男性の名はラセンRasenさん。彼らバイク屋で、修理や給油をこの地で請け負っているようだった。
時折給油のために大通りからライダーが訪れてきた。看板らしきものが何もなかったから分からなかったけれど、よく見るとタイヤが道路脇に置いてあり、それが目印のようだ。この地域ではちょいちょいこういう個人の民家のような場所でバイクのサービスがある。何もなかったらトラブルに対応できないもんね。
今晩はそのガレージ内にテントを張らせていただいた。ラセンさんガレージの入り口の鍵の掛け方も教えてくれて笑顔で「ここなら安全だ!」と笑ってくれた。
ネットはない。真っ暗になるまでテーブルの置いてある敷物の上で座ってゆっくりした。数日前に思い浮かんだあれこれ手放すことにゆっくり取り組めた。
晩御飯の時間になるとラセンさんが灯りを照らしながらやって来て「晩御飯を食べるか?」と尋ねに来てくれた。そして、クスクスを用意してくださった。
ラセンさんと二人でテーブルを挟んで黙々といただいた。モロッコに入ってから初めていただくクスクス。味付けはシンプルに塩だった。ごろごろした野菜はくたくたになるまで煮込まれている。もちろん美味い!
それから夜はとても安眠することができた。
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翌朝の風景。朝8時。
ラセンさんは朝食を用意してくれた。お茶と、昨晩モハメッドさん宅でもいただいたホブズ・シェヘマHobz Shehema。
別れ際に写真を撮りたかったけれどここでも「ノー」だった。やっぱり写真を撮られるのが嫌いかぁアマズィア。ラセンさんはちょっと日本人っぽい顔をしていたので表情を残したかった。あと、奥さんが特に控えめで、壁から半分くらい顔を出してぼくとラセンさんが話している様子を伺っていて、ぼくがそれを見つけて挨拶をしたらひゅっと引っ込めてしまった。
というわけで、静かに出発しました。フレンドリーに迎え入れてくれてとても印象的だった。嬉しかったです。ありがとうございました。
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<道中の写真>
近くで撮影させてくれたラクダ氏
道路を横切るラクダ氏。