HIRO EATS THE EARTH

地球まるごといただきます

アメリカ移住を夢見る青年(Imi n'Izrou إيمي إن أوزرو→Imi N Ouassif)

夕方、もうすぐ地図で確認したカフェに辿り着こうというところ。もうクタクタに疲れた。今日はここで眠らせてもらうつもりだ。ここまで大体一軒目で寝場所は確定している。今回も大丈夫な気がする。

ぼくを追い越していくバイクの後部座席に座っていた青年がこちらを向いて「ハロー、ハウアーユー」と尋ねてくる。「お気楽なバイク野郎め、こちとら90km近く走り疲れて答える余裕はないんじゃ」と内心思いながら、漕いでることに集中しているフリをして黙々スルーした。そしてカフェに到着。

さっきスルーしたバイクも停まっていたので微妙に気まずい。が、オーナーに話しかける前に先ほど声をかけて来た青年が自らまた英語で気さくに話しかけてきた。かなり流暢に話せる。モロッコ人にしてはとても珍しい。ぼくは彼と握手を交わして話し始めた。先ほどの態度からすると都合良すぎるぞオレ。とセルフツッコミを入れた。

彼の名前はレドゥアン。23歳。普段は首都のラバトに住んで建設関連の仕事をしているそうだ。今はこのあたりの村にある実家にしばしの期間帰省中なのだという。

彼に眠る場所の相談をするとカフェのオーナーさんに相談してくれて、すんなりとOKをいただいた。外のスペースにテントを張れると伝えたけれど、寒さを心配していただき、わざわざ室内を使わせていただけることになった。とてもありがたかった。

レドゥアンは目が希望の光でキラキラしているような青年だった。とにかく「ウェルカムウェルカム」と笑顔で伝えてくれた。

快く周囲にあるアマズィアの結婚式用の装身具を紹介してくれたり、周りの友人達たちの紹介や翻訳をしてくれたり、カフェで出せる晩御飯、卵とパンのご馳走をしてくれたりした。

若者らしく、話題は日本の漫画になる。レドゥアンは特にワンピースが大好きで、彼から何かおすすめの漫画を尋ねられたので「今日本では鬼滅の刃が一番人気になったんだよ」と伝えておいた。彼は鬼滅の刃を知らなかったそうなので今度観ると言っていた。

印象に残っているのはモロッコ人の若者がヨーロッパに移民する話。

レドゥアンの友人達の多くはモロッコよりも経済的に豊かな暮らしを求めてヨーロッパに移住したそうだ。

しかし一番ご近所のスペインに行くのは簡単じゃない。よって陸路でトルコまで渡り、ブルガリアセルビアへと移っていき、フランスやスペインに到達するのだという。

旅をする自分としては具体的にどう金銭的にやりくりしつつ移動するのだろうと気になってしまう。聴きそびれたが。

若者がより経済的に豊かな国へ移っていく傾向はアルバニアでもよく見られた。自然なことだと思うが、今の世界のリアルな現状は経済優位なのだと感じる。個人的にはその情勢を好まない。それだけにこうして現状を教えてもらえるのはありがたい。それを受けての自分の一手をより深く考えられるから。

ちなみにレドゥアンの将来の夢はアメリカで暮らすことなのだそうだ。彼のような、国の向こうの広い世界に心が開けている人物であれば当然と言えるくらい、想像できる夢だった。

こうして将来の夢が聴けるって良いなぁと思った。自分は今、希望を見ながら生きている最中だから、未来に希望を持って進んでいる人の話を聴けると嬉しくなるのだと思う。

レドゥアンはどんどん「一緒に写真を撮ろう」と言ってくれてこちらも楽しくなった。こんな風に、段々と国の枠を超えて人と人が繋がっていくのだろうと思う。

最初はイライラするあまり、スルーしてごめんよ。

<写真>

今日は珍しく小雨が降った日だった。

セルフタイマリーング。

道路から外れた場所でも。

泊まったカフェの前にて