HIRO EATS THE EARTH

地球まるごといただきます

全く旅を楽しめない(Temara تمارة→Bouznika بوزنيقة )

昨晩出会った「地獄の仏」ことアミンヌの差し出してくれたシロップ及びビタミンCのおかげが大きいのか、寝起きには咳が激減してしていた。体調は55%くらいになった感じ。でも頭痛と鼻づまりと体全体のだるさはまだガッツリ残っている。熱は初期から一貫して出ていない。おそらく大抵の人にとっては休まず出勤できる程度の重さだと思われる。

テントを開けて自転車のタイヤを目視で確認すると後輪が潰れていた。ガッデム。これからやらなければならない作業工程をこの身体で行うと思うと気が重い。

今日はモロッコに入って初めての雨天。これが台風のような強さだった。

もう、ぶっちゃけこのままテントの中で一日中眠っていたい。

フラフラする頭を落ち着けて状況を整理し、やらなければならないことを並べる。そしてまず第一に取り掛からなければならないことをピックアップしてそれだけに集中する。

まずパンクの修理。

他のことを考えるのは無事にパンク修理ができてからで良い。

修理作業全般、だるい身体で遂行するのは地味に辛い。というかとても辛い。交換したチューブへの空気入れが特にエネルギーを使う。ポンプ一押しにフゥっと力を込めること200回。1時間かけて全行程を終えた時には相当ゼエゼエしていた。

それから今日の作戦を考える。

この場所でもう一泊したいけれど、実際有料だから無料でテントを張れる場所に落ち着きたい。体調は未だ万全ではないからやっぱり休むこと優先で動いていく。そのためにもやっぱりガソリンスタンドのようなお願いしやすい場所に標準を合わせて移動を開始。

しばらくの間、雨が強かった。スノボ用の防寒着を上下に纏って雨を思い切り浴びながら漕ぎ進んだ。頭はそんな中でもガンガンする。でも走ることに集中。大切なのはノーアクシデントで目的地に到着すること。ただただ淡々と、それだけに集中した。

今日も昨日に引き続き苦行。

地図で目星をつけていた広めのガソリンスタンド兼カフェのような場所に到着。カフェの人に眠れる場所尋ねると何か心当たりがある様子で「待っていて」と言われる。

その言葉を受けて席で作業をしながら待つこと6時間(!)。お店も完全に閉店状態になり。結局、現在閉店中の隣の飲食店の前のスペースにテントを張らせていただけることになった。もう夜も冷え込んでいるけれど防寒具と冬用寝袋にくるまってあったかい。

今、旅は全く楽しくない。

もはや、ただの苦行でしかない。これから先も旅して自分の納得できるようななにかを生み出せるようなイメージが出てこない。

日本で出張フォトグラファーをやっていた頃が懐かしい。ヨーロッパで平和な旅をしていた頃が懐かしい。

所詮自分は東京生まれの東京育ち。アフリカ大陸冒険なんてタフな挑戦は無理だったじゃないか。なんの危険もない場所で穏やかに旅なりフォトグラファーなりやっていればそれで満足なんじゃないか。

こんなに自分が苦しんでもほとんどの人からは何とも思われないようなニッチな活動にしかならない。それなのになんでそこに全人生の時間を注いでいるんだろう。

亡くなった友人もぼくに対して旅を「強制」までしたことはない。辞めたら辞めたで「辞めたのかー、ガッハッハー!」と笑うだけだろう。自分が辞めたくなったら辞めれば良い。何の使命感も義務感も要らない、実に軽々とした世界にいるのだから。

たくさん、旅に対する後ろ向きな気持ちは湧き上がってくる。

でもそれは、今、新しい環境下でそこに適応するべく身体の全組織がトライアンドエラーを繰り返している過程として体調を崩しているからかもしれない。深追いはせず、両手を合わせて呪文を唱え、眠った。