HIRO EATS THE EARTH

地球まるごといただきます

地獄に仏(Salé سلا→Rabat الرباط→Temara تمارة)

体調の回復具合は前日比+3%といったところ。50%(昨日)→53%(今日)という感じ。ぶっちゃけ変化なしと言っても良いくらい。

正直さらに休みたいけど先方のご都合的にそれは出来なさそうに思われたので出発した。突然の見ず知らずの外国人に3泊4日間もケアしてくださって大感謝である。出発時にかなりドタバタして写真は撮り損ねてしまった。

体調が悪いだけならまだ状況はそこまで難しくないかもしれない。

ただ、今居る場所が都市圏であるというのがとても厄介だった。

これから通過するのはモロッコの首都「ラバトRabat」

すぐその次はモロッコ最大規模都市の「カサブランカCasablanca」

何と言っても首都圏は居るだけで大変。車や人にぶつかって事故らないように四六時中気を使う。何と、モロッコでは歩行者信号が青でも平気で車が突っ切っていくポイントもあります。信号の意味。。

特に今は物を盗られる心配をしなければならない感じがするところが一番きつい。道ゆく人の視線が首から下げたカメラや前かごに取り付けたアイフォンやゴープロを目で追っているように見えて余計に警戒する。最近よく入ってくる旅人を標的にした盗難事件を受けて自分もナーバスになっている。しかし警戒するということはそれだけで体力を猛烈に消耗する。30分もまともに歩けない。もちろんろくに写真も撮れない。

歩いているうちに体調は悪化してきた。咳き込みが激しくなり、頭痛が強くなってきて、瞬間的に吐き気まで催した(結局吐かなかった)。催した瞬間「これは家でいただいたお茶の味が合わなかった」と直感した。

とにかく歩くのがきつい。立っているだけできつい。

カフェでWi-Fiをもらって店の横の地べたに座り込んだ。これまでのツテに宿泊先の助けを求めるメッセージを送って2時間ほど待ったけれどダメ。立ち止まった時間が長引いて寒くなってきた。

仕方がないので自力でテントを張れる場所を探す作戦に戻った。

苦行。そう思った。

「旅の中で大変なことって何ですか?」という質問がよくあるけどまさに今だ。体調が悪い。寝る場所を見つけるのが至難。周囲への警戒。そしてこんな時でも容赦なくパンクするタイヤ。今は楽しい時でもなんでもなく、はっきり言ってただ辛いだけの時だよ。間違いない。

ヨーロッパにいた時は本当に甘やかされていたんだなあと思う。人々からはもちろん、社会環境まるごと全てに。そもそもまず誰かに物を盗られる心配なんてしなかった、アルバニアでの自転車盗難(結局返ってきた)の件以外盗難にはあったことがない。人々はよそよそしくも常識というか、距離感をわきまえている感があり、最低限、危害は加えてこない。でもこのアフリカ大陸ではそれが有り得る。ぼくのような貧乏旅行者でもこのカメラやパソコンなど、きっと彼らの人生を変えてしまうほどの大金になるかもしれない。そう思うと狙われるのも当然だと思えてくる。

とにかく今、最低限やるべきことは今晩安全に休める場所を確保すること。体調を回復させるのが最優先。都市圏を抜け、安定と信頼のガソリンスタンドでまた素晴らしい出会いに恵まれて無事に眠れるイメージを持って走り出した。

ロッコの首都は海沿い。大西洋の見えるポイントまで出てきた。

ノロノロ進むぼくの自転車を追い越すサイクリストが話しかけてきた。

英語がある程度話せる上に「自分も同じことをやってたよ〜!」と嬉しそう。彼なら何とかしてくれるという期待感がものすごい勢いで膨らんで、走りながら口頭で要件を伝えた。

すると、彼が近くのキャンプ場まで連れて行ってくれて宿泊代を肩代わりすると申し出てくれた

助かった。。。地獄に仏である。本当に、地獄に仏。後光差す仏についていきます。

「アミンヌAmine」という名前の彼は、モロッコ政府の農林水産部門で働いている役人だという。彼はオランダからモロッコまでの自転車旅を経験したことがあるそうで、このよろよろ走る旅人のことを気遣ってくれた。

彼の前で咳き込むぼくに「何か薬を」と言って薬局で咳に効くシロップとビタミンCのタブレットを買ってくれた。そういえばビタミンCって風邪対策に良いんだった。亡くなった友人がよくぼくに推してきていたことを思い出した。

キャンプ場まで到着

現在はシーズン外で閉まっているというキャンプ場のオーナーと話をつけてくれて無事に宿泊できる運びとなった。

夜の飲み食いも心配してくれて食べ物とミネラルウォーター(この地域あたりは水道水が飲めない)とフルーツまで買っていただいた。

アミンヌ、あなたがいなかったらぼくはもっともっと地獄の苦行を続けていたことだと思います。とてもとてもとても助かりました。

連絡先を交換して連絡を取り合おうと約束してお別れした。

実際の寝場所は、明日の雨を見越してオーナーさんの車庫のテントを張らせていただいた。