まだ終わりきっていない作業のため、昨日に引き続きお家に滞在させていただいた。
しかし、先週から続く咳き込みから始まった症状がキツくなってきた。
咳はずっと止まらない。それに加えてじんわりと頭痛がする。喉が痛くなる。ときどき痰が喉奥に発生する。声が枯れる。耳や顔が火照る。身体じゅうの皮膚の感覚神経が過敏になって服に擦れると痛い。間違いなく風邪だと思う。ただし、熱はない。まだ軽症の域だ。
回復に徹するため、夕方5時にはソファに倒れ込んだ。ありがたいことに、今は清潔な室内で安全に眠れる環境がある。なのでお休みです。
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今日までぼくの咳き込みを心配してくれた人から、甘く煮詰めた小粒のフルーツやオリーブオイルが多めに入ったスープ(右写真の右の器に入ったスープ)を用意していただいた。これは咳き込みに対するモロッコなりの家庭医療のようである。
食べると確かに一定時間は咳が止まる。喉の奥のむず痒いところが長く潤う感じがする。モロッコではこの乾燥した気候の中で自分のような症状にかかることは一般的で、それに対する土着的な知恵が用意されているのだと思った。お心遣いに感謝である。
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ぼくは風邪のような軽い病気の治療に薬は使いません。薬を使った方が早期回復できるのだとしても、使わないで治す方が理想だと考えています。
休む。寝る。お湯を飲んでたくさん排泄をする。出来るだけ食べる量を減らす。自然回復を待ちます。
しかしこの考え方は他人にはなかなか理解されません。旅先で衣食住を助けてくれるのは主にぼくの親世代の人々です。従ってそのくらいの人々との関わりが多くなりますが、この世代の方々の「病気には薬」「一日三食」という価値観はムスリム国にとってのアッラーくらいの強度で浸透している感があります。
だからそこに反対すると「は?何言ってんのお前?」的な顔をされて何度も勧められます。これに対してぼくは計10回くらい「ノー」と答えなければならなくなります。
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風邪も大変だっけれど、もう一つ、お腹も下した。モロッコに入って二度目。そして今回はその犯人が分かった。「ビサラBissara」だ。今日、お昼にお父さんにご馳走していただいてその反応が顕著だったのではっきりした。
ビサラというのは空豆を煮詰めてペースト状にしたものにオリーブオイルとクミンをかけ、ホブズ(アラビア圏のパン)につけて食べるというモロッコの国民食です。この写真がビサラ。
しかし、ぼくの摂取したビサラは毎度、胃腸の中で大量のガスを放ちはじめました。それが上下に向かい、硫黄臭の伴うゲップと放屁になる。そして液状の大便。30分に一度くらいのペースでトイレに駆け込みました。ああ辛かった。
自分達の国民食に誇りを持っているのはどの国でも共通している印象があり、モロッコの人々にとってはそれがこのビサラ。なので「ビサラでお腹が壊れた」などと伝えても全く理解されない。お父さんは「ぼくにはそんなことは起こらない、あり得ない」と言い張る。「いや、人類には生育環境の違いってものがありましてね、それ以前に合う合わないというものは人それぞれ全く異なり得るものでしてね」と説明したくなるけれど耳を貸してくれる雰囲気がなかったので辞めておいた。
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<その他写真>
朝食はいろんな種類のパンとオリーブオイル。
中でもこの「スレンジSrenji」というパンが気に入った。ドーナツのような揚がり具合の中はもちもちパン生地。甘くはない。
「撮りなさい」と圧力強めのお母さんに指示されるまま取ります。
モロッコのどこにでもあるこのポットの名前は「バラッドBarrad」です。
夕食にはこの羊のレバーのような肉と豆とにんじんのスパイス炒めにパンをつけて食べるものでした。
ピンク色のタジン鍋をインテリアに飾っている。
広いリビングの中央に立つこの柱のタイル装飾は「ゼリージZellij」という名前。調べてみるとモロッコ全般のタイルアートの総称のようだ。いろいろな形がある。
特にこの形は「Zelliji Beldi」という名前だそうです。