HIRO EATS THE EARTH

地球まるごといただきます

少年達に追われ、寝場所を求めて暗闇を彷徨う(Sidi Kacemسيدي قاسم→Moulay Yacoub Provinceإقليم مولاي يعقوب)

フェスに向かうためマップに表示された道を辿る。今日はメインロードから外れて小さめの道に入って少し田舎を走ることにした。

小さめの村に差し掛かる。

 

きっとこちらを自転車で通る外国人は珍しいのだと思う。注目を浴びる。

子供たちは地べたに座っていて、ぼくが挨拶しながら通りがかると返事がてら「金くれ」の合図をしてくる。人が多めの場所では誰かが大声でこちらに向かって荒っぽく何かを言っている。

嫌な予感がする。メインロードを走っていた時にはなかった空気。ここでは人々が遠慮なく食ってかかってきそうな勢いを感じる。目を合わせないように早々に自転車を漕いだ。

10〜14歳くらいに見える少年が自転車で追いかけてきた。横に並んできてずっと「水くれ、食べものくれ、お金くれ、カメラ、iPhone、ゴープロ、とりあえずなにかくれ」と訴え続けてくる。後部の荷物にチラチラ目をやる。何かひったくれないか見ているのだと思う。

さらに同い年くらいの少年仲間が2人、自転車で追いついてきた。3体1、囲まれた。みんなで物をねだり続けてくる。

ぼくはずっと拒否しながら走り続けて振り切ろうとしたけど、体力的にも積載している荷物の重さ的にもスピード勝負では子供たちの方がずっと有利。

4km近くこの走りは続いた。ぶつかるスレスレのところまで近づいてきていた。いつ手を出されてもおかしくない。

カフェが目に入り「そうだ、大人に助けを求めよう」と思って止まった。

案の定、子供たちは大人達の目の前で悪さをする気はないらしくそのまま先に進んで、少し先の木陰で僕の再出発を伺っているようだった。カフェのオーナーと思しき2,30代の男性は僕らの様子を見ていて事情を察してくれていた。カフェの少し先の木陰まで歩いて行って待ち構える少年3人を元の村へと追い払ってくれた。

怖かった。あのまま走り続けていたら掴み合いになったり何か物を盗られたりしたと思う。カフェの人に頼ろうと思いつけたのは、日頃からなんでも人に助けを求めるようにしていたのが幸いしたように思う。途上国の田舎の子供たちはヤンキーさを剥き出しにしてくるけれど、地元の大人がいればそれを制御できる。これは覚えておこう。

カフェのお兄さん、水も差し入れてくれて良い人でした。ありがとうございます🙏

にしても、この怖い思いをしてから子どもに対する悪イメージが強く残ってしまった。

もはやぼくが持っているアイテムの全てが心ある人からの応援でこの手元にある。それらをこんな形で奪われてしまうことは嫌で嫌でたまらない。例え少年たちが盗品を売ったお金で病に臥す母親を治す薬を買おうとしているのであったとしても。

ここから先は景色がより砂漠らしくなってきます。

お祈りする羊飼いのおじさん

寝場所探しは難航した。いつも日が暮れる2時間前には人に尋ねはじめるけど、今日の道は人が少ない。ひとつ通りがかった村の人は無愛想に「もっと先に行け」とだけ言う。この村の少年たちもぼくのカメラや荷物をチラチラ見ながら近づいてきてぼくの動きを観察している。先の件があったので、空き地でキャンプをしたらなにか盗まれそうな気がしてくる。

子供の一件でかなり参っているので早く休める場所を見つけたい。

先に進んでモスクの前にたむろするおじさんたちに声をかける。しばらく内輪で怪訝な顔をしながら話し合ってモスクの前のスペースにテントを張らせてくれることになった。ホッとした。

のも束の間、俺は警察だと言わんばかりに身分証で自己紹介する男性が来てアラブ語で何か言ってくる。理解できないことを翻訳機で伝えると「とりあえずついてこい」とジェスチャー。モスクはまずいから別の場所に連れて行ってくれるみたい。

連れてこられたのはガソリンスタンド。オーナーさんと話しGoogleマップで「ここに行け」と5キロ先のスタンドを示されたので行ってみることに。

この時点でもう真っ暗。街灯は全くないので真っ暗。ヘッドランプをつけて慎重に進む。狭めの二車線道路に車の交通量はそこそこあってなかなか怖い。

たどり着いたガソリンスタンドのカフェのスタッフに尋ねる。みんなから漂う「どうしたら良いか分からんわ」感。

先の警察のおじさんもガソリンスタンドのおじさんもテキトーだったのだろうと思った。カフェにいた元気なおじさんが入ってくる。おじさんはタクシードライバーだそうで、外国人観光客を相手にするのでちょっと英語が話せる。おじさんは「ガソリンスタンドの庭でキャンプしても良いぞ」と教えてくれた。

一安心。テントを張って準備を終えると、元気なおじさんがまたやってきて「申し訳ない、ここは警察のコントロール下にあってキャンプしたら罰せられるんだ」と言われた。二転三転、撤収して他の場所を探してみることに。

ロッコに来てから実感するけど、ヨーロッパではぼくみたいな状況をいろんな人から良く心配してもらってたなぁと思う。実際に寝場所の協力をすることはできないけれど心配そうにいろいろ考えアイデアを出してくれる人が多かった。モロッコに入ってからはそんな気遣い一切なし。暗い夜道に放浪者ひとり野放しにするなんて気にしない。おじさんには笑顔で「バーイ」と言われた。

結局警察の男たちに提案された場所はダメだった。完全に振り出し。5km移動するまでの間いくつか見つけていたカフェや別のガソリンスタンドに当たるつもりで来た道を戻った。夜9時半、真っ暗な中の移動は事故につながるので控えたい。

と、その時、後輪がパンクした。よりによってここでパンクか、、まあ、少年たちに追いかけ回されている時じゃなくてよかったけれど。修理してる暇も気力も無いので手押しでゆっくり進む。まずはガソリンスタンドへ。

2人のおじさんがずっとアラビア語でなにか話してどこかに電話をかけたりして検討してくれたようだったけれど最後はあっさりジェスチャーで「どこにもないよ」と諦められてしまった。ガソリンスタンドを見る限りテントを置けそうなスペースは広々あるけどな。。でも、その場の人が協力的でないなら他を当たる方が良い。

寝場所が見つかるまでのぼくの気持ちはずいぶん荒んでいる。

「まったくケチだなあ、ただ一晩テントを使わないスペースに張るだけなのに」

人様の生活圏内に踏み込んで無茶なお願いを通そうとする自分の方がまず勝手極まりないのだけど、何にも問題なく助けてくれる人もいるし、そうでない人もいる。この両者の違いを考えてしまう。そして「最悪死んでも良いんだから」と呟き続ける。疲れて孤立して自分の身が危なくなってくるとこうやって呟いている。

次はカフェへ。2,30代くらいの若者い男たちがスタッフで、すぐに店のすぐ横のスペースを使わせてくれた。たまらず出てくる御礼の言葉に快く笑顔で返され、「そうそうこれこれ、こういう人を探しているのだよ」と確認できて安心した。モロッコではなかなか快く助けてくれる人と出会えない印象がある中だったから、この時の安心はものすごかった。パンク修理をする気力も無く、マットレスの上に倒れた。

二つ目のガソリンスタンドのおじさんにご馳走いただいていたチキンのサンドイッチとスパイス付きのオリーブを頬張った🙏

少年たちに追いかけ回された件、寝場所になかなか辿り着けなかった件、モロッコの旅はなかなか厳しいと感じています。こういう時に写真を撮る余裕もない。でも体験できたことが後々良かったと思えそうです。これから南方に行くほどより厳しくなるだろし、良い練習の機会なのでしょう。

お世話になったカフェ。