一日中雨だった。
昨日、音信のなかったムスタファ一家を捕まえたい。本当に彼らの連絡先をもらわなかった自分の甘さが悔やまれる。
とりあえず、SNSを使うことにした。ここまでで繋がってきたボスニアヘルツェゴビナの友人の助けを求める。ムスタファの顔と車のナンバーの写真が手元にあるのでそれをシェアしてもらって本人まで辿り着く作戦。
できればこれはやりたくない。そもそもまず、本人に辿り着ける可能性が低い。ムスタファだってなにかアクシデントがあって現れなかったのかもしれない、それなのにこんなことを書いてしまっては不特定多数の人から彼は悪者と見做されてしまう。普段から応援してくれている人には余計な心配をかける。
それでも、これにかけたのは、このバルカン半島の国の人たちは旅行者に対するホスピタリティ精神が強かったからだった。なにか問題があればその国の人間として解決のために動いてくれる人が少なからずいる。誰が、どんなふうに手を差し伸べてくれるかわからない。それにやっぱり自分のために応援として送ってくれたお金をちゃんと自分のために使いたい。
翻訳機を使って作文して、日本語とボスニア語を入れ替えておかしな訳がないか確認し、より明確で伝わりやすい表現になるように修正し、また、言語を入れ替えて確認し、、を何度も繰り返して、安定したところで投稿を作成した。現地の人に理解してもらえるかドキドキだ。
ほどなくして何人かの人が投稿をシェアしてくれたし、メッセージを送ってくれる人も現れた。
「警察に届け出た方が良い」というアドバイスを何人かから受ける。当たり前のアドバイスなのだと思うけど、言葉が通じない上にいた旅行者の言いがかりに警察がどれだけ動いてくれるのか懐疑的だった。でもこれだけ言われたらやっぱり頼ろうか、と思い直して、明日に行ってみることにした。
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ずっとレストランの席に座ってこの投稿周りのことをするので1日時間を使った。その間少しお客さんの写真を撮ったり、3食分ご馳走してもらったり、少なくともこの状況で安定してとどまれる環境があるのはありがたかった。