ボスニア・ヘルツェゴビナ旅の最後の日。このブルチコの街中にある国境を通ってクロアチアに入る。
ブルチコでは大晦日と年明けを過ごし、その間このプレドラグ、ダヤナと猫のジューチョにあたたかく迎えてもらってホクホクして過ごしていた。いや違った。ジューチョとは全然仲良くなってない。尻は叩かせてもらったけどそれ以外は触れ合ってもいない。それでもジューチョがこんなに他人を寄せ付けるのはヒロが初めてだと二人は言っていた。え〜、ただ人に慣れてきただけじゃないの〜ん?
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今日もあったかい朝ごはんをいただいた。プレドラグが「肉は野菜の一種だぜ」という冗談を言うくらい、バルカン半島では肉食が主流で野菜が並ぶ分量は少なめな印象。
数日間泊まらせてもらったおかげで衣類の洗濯もシャワーも万全。スーパーに行って日用品やお菓子を購入して財布の中に残っていた小銭を全て使い切った(小銭は基本両替ができないから本当に荷物になる)。
自転車の修理もボスニアの方が安いからと自転車屋まで案内してくれた。けどこっちは日曜日だったので休みだった。
これまででいただいたけど使っていない荷物の処理も彼らにお任せした。雨具やジャケット、手袋など、使っていなかったもの。6kgくらい荷物が軽くなった。
これは走り出してから分かったけれど本当に走るのが楽で、その分周りの景色を味わうことに意識が向く。本当に旅の荷物はバランスが大事だと思った。周りで見ている人は心から良かれと思って色々なアイテムを差し出してくれる。が、どの程度それを受け取るのか一番適切な判断できるのはいつも自分自身だ。
食べ物の餞別にサンドイッチも作ってもらい、焼き豚と油をあげたものもパックに入れて持たせてくれた。
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ダヤナは国境を通る際の手続きがどうなっているのか心配してくれて、ダヤナがPCR検査をやっているラボラトリーまで案内してくれて、担当のナースさんに通訳もしてくれた。自分が受けたのは正式にはPCR検査ではなくて免疫検査で、PCR検査よりも簡素で安い28マルク(14ユーロだった)。
結果はネガティブ(NEGATIVAN)。3ヶ月近くノーマスクで生活している。
本当に、プレドラグもダヤナも最後の最後まで気にかけてくれた。国を出る時にはいつも孤独を感じてそれが楽しくもあったり寂しくもあったりするけれど今回はこうして見送ってもらった。改めて、見届けてくれる人がいると言うのはとても嬉しいことだと思った。プレドラグとダヤナは歳が近いし、いずれ地球のどこかでまた会うような近さを感じる人たちだった。ありがとう。
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ボスニア・ヘルツェゴビナとクロアチアの国境はこのサバ川という大きな川をなぞっている。
「レパブリカ・フルヴァツカ」クロアチア共和国。ここからはEUだ。
クロアチアの国境。テスト結果を見せると係官はずっとパソコンと睨めっこしていて、別の係官を呼ぶ。二人で何か話し合いを続けて自分のこれまでの旅の日数を尋ねてきたので答えると通してくれた。多分、日本から直できた場合だともう少し何か制限があったけど自分はずっとこの地域に滞在していたのですんなり通してもらえたというパターンだと思う。ネット上の発表ではあまり引っかからない珍しいパターンの旅行者なんだと思う。
というわけでレパブリカ・フルヴァツカ入国。頭文字も「HR」でフルヴァツカから取られる。車のナンバープレートとかも「HR」。このサイトのカテゴリ欄には「クロアチア」と表記していきます。
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さあクロアチア。最初の印象は
整っている。
クロアチアもまたユーゴスラビアの一部で90年台に戦争があった国だけど、ボスニアやモンテネグロと比べると家並みとか街並みとか道路とか農地とかそういうものが整っている感じ。
この日走ったのはほとんど大規模農業地帯。アルバニアやボスニアで見てきた個人の農場よりも遥かに大規模なもの。機械化されている。
宗教はキリスト教カトリックが9割近い人口。これまでずっと正教会だったのと雰囲気が本当に違う。至る所に十字架と磔にされているジーザスの像を見た。
教会は屋根がとんがって時計台がついているデザイン。
森も森でそのゾーンは深々としている。でもしっかりと農場や街とは区分けされてる感じ。
写真や動画をいい感じに撮れないか試行錯誤してたら
転倒した。。。
町が見えてきた。わー、教会のとんがり頭が。
とんがって高いな〜
この日も暗くなるまで走り続けた。
寝るところはやっぱり人に尋ねるため、レストランやバーを当たる。レストランやバーは一番人と人が仲良くなりやすい場所だと思う。
住宅街の中に一件だけ建っているローカルな関わり合いのありそうな雰囲気のバーを発見したので尋ねてみる。
カウンターの向こうにいたのは女性で、怪訝な顔一つせず「どうしたの?」という表情で耳を傾けてくれた。この瞬間、これまで滞在していた国との文化の違いを感じた。
アルバニア、モンテネグロ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、トルコ、イスラム教が生活に馴染んだ地域では女性は積極的なコミュニケーションは基本的にしない。そもそもバーとかカフェであまり見かけないし、居ても静かにしていてすぐ近くにいる男と話が始まって、基本話に参加してこない印象がある。もちろんこれは本人の性格によるから話ができる人もいるけど、かなり少数派だったと思う。超大雑把な印象で言うと、伝統的なイスラム文化では女性は生活全般なんでも控えめだ。もちろんこれは男性の自分から見た印象でしかないけれど。
彼女は英語が話せないけれど翻訳アプリを使って対応してくれた。するとこのバーの向かいの土手でテントを張っても大丈夫と教えてもらった。ああよかった。一安心。
「こんな寒いのに大丈夫?」と心配されたけど寝袋のおかげさまで心配なしです。
わいわい飲んでいたおじさんたちはこの珍客を注目し、事情を聴いた一人が「何か飲むか?」と手で合図をしてくれたので「ピーヴォ(ビール)」をいただくことにした。クロアチアのビール。
ビールって毎回ラベルを見て「わあ、これが〇〇国のビールかあ」と言う感じで感動するんだけどいつも味の違いはわからない。いつも飲んで「美味い!」と言う感じだ。
最初に対応してくれた女性はマリアさん。ビールをご馳走してくれたおじさんはヤコブさんと言った。聖書で聞いたことのある名前で、ああ、カトリックの国にきたんだなあとほんのり実感した。
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電源をお借りして作業もできた。最高の流れだ。
マリアさんは翻訳アプリで「お腹空いてる?」と尋ねてくれて、近所の家の旦那さんに連絡し、食べ物を持ってきてもらった。
ヨーグルトにソーセージにパン、ハムパン、あとはスイーツがいろいろだった。ひゃーありがたい!
なんとなくみんな楽しんでいるタイミングで写真を撮らせてもらった。ちょうどマリアさんに後光が差していることに後から気がついた。
いろんな装飾を見ててもやっぱりクリスマスなんだなあと感じた。
このまま作業をして寝ようと思っていたら、お客さんの一人がこの近くのホステルの部屋を一晩予約してくれた。ありがたすぎて頭を下げまくった。本当に作業する場所と「テントを張れる」と言うお墨付きの場所がわかればそれでよかったのだけど、その何十倍もおもてなししていただいた。ほぼ誰ともちゃんと英語で会話ができなかったけれどとてもあたたかくおもてなししていただいて感謝している。