支度を済ませてレストランに立ち寄って挨拶に。「ご飯を食べて行きな」とオーナーさん。ありがたくいただいた。
昨晩の現場に居合わせなかったスタッフから心配された。彼らが言うには「あれはジプシーだ」ということだった。もちろん自分に真相がわからない。けれど、失礼を承知で言うならやり取りの中に知性が感じられなかったような気がする。とにかく力技でなんとかしようとする感じ、妻のジャスミンはアラブ系っぽい顔をしていたし、子供や病気を理由にお金を求めてくる感じ、物乞いに通じるような部分を感じた。ジプシーってそういう感じなのかなぁ。スタッフは「ジプシーは関わりが難しいんだ、気をつけた方が良い」とぼくに念を押した。
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今日出発すると伝えると『もう行くの?なんで?』と惜しんでくれるスタッフもいた。昨日の件で人間関係の難しさを感じていたところだったから、なんだかこのひと言で心が回復した気がした。それでもぼくはもう行かなければ。
出発前、スタッフのハルンは10ユーロを、オーナーのセヨさんは10マルクを、走り出してからムスタファが車で追いかけてきてくれてシリニツァを届けてくれた。なんだかんだでちょっと長い縁になったレストラン『Kameni Zamak』。安全に滞在させていただきながら美味しいものをたくさん振舞っていただいた。ありがとうございました😊
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ここからはいよいよ本当に自由の身。ワクワクする、というか、ドキドキする。
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次に向かう国、クロアチアに入る前に国境のある街、ブルチコに居を構えている友人に助けて貰いたいと思った。ゼレンコバツで出会ったプレドラグとダヤナ夫妻。「ブルチコに来たら遠慮なく連絡してよ」と言ってくれていたのが助かった。
Kameni Zamakに滞在している間も含めて、ここまでシャワーと服の洗濯がまともにできていなかったので助けてもらいたい。それに国境を跨ぐときはまた色々と面倒なことがありそうだから英語でコミュニケーションがしっかりできる人と一緒の環境があると良い気がした。というわけで、スロベニアとは少し逆方向になるけれど、ブルチコに向けて出発。95kmを8時間かけて走り切った。
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ブルチコに到着。迎えに来てくれたダヤナとハグで挨拶した。
彼らの行きつけのバーでビールとハンバーガーをご馳走になった。95km走行した体に染みた。
バーはいかにも、という感じのロックでヘビメタなサウンドの大きい狭いバーだった。さらにたくさんビールをご馳走してもらった。ここに集うプレドラグの友達はみんなミュージシャンだった。
このときダヤナからチラリと聴いた話が印象に残っている。彼女は3,4歳の時のことをよく覚えていて、それは戦争の時、故郷の町から疎開してセルビアに移り住んでいた時。父親は出兵し、母親とまだ生まれたばかりの弟と3人で生きていた頃。食べるものがなくて母親は物乞いをしていた。周りの人もそういう人が多かったということ。あまり良いテーマではないからと隣で聞いていた友達にたしなめられてこの話はそこで終わった。
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街ではカウントダウンライブをやっていた。去年までは大晦日と元旦の二日間だけだけど今年から日数を増やして開催しているとのことだった。この後すぐに眠くなって三人で家路についた。