観光名所とか有名どころに拘らないのは、自分の自然な欲求にしたがっているだけなんだけど、その中身を少し紐解いて言えば、なんでもない人の姿を眺めたり、話をしたりすることの方が好きだから。若干勇み足っぽく言っちゃうとそっちの方が価値があるとすら思っているところがある。
ネットで検索して写真や動画が出てくる場所へ自分で行って、見て感じて撮るのももちろん価値があって素晴らしいことだと思うのだけど、自分の場合ぶっちゃけるとそれは「誰かがやってくれるさ」くらいの軽さでしか捉えていない。
本当に関心があるのはアナログレベルで「こいつと会ったことがある」を増やしていくこと。自分は元々生活に必要な助けを得るためにカフェとかレストランに行くことが多かったけど、ここは路上よりもゆっくり人と話すチャンスが生まれやすい場所なんだよね。今はそのために行っているなあ。
現代は一度話をすればSNSとかで繋がるチャンスがあって、それはまあもちろんすごく面白くて素晴らしいシステムだけど、たとえ自分はSNSがこの時代に存在しなかったとしても、会って話をしてその時限りで終わったとしても、こうしてアナログで人と会うことには価値を感じている。
日本語を話せる人なんてまずいないから、話すことなんて一言二言だけだったり、表面的なことだったり、別にそもそもお互いそこまで関心がなかったり、必ずしもいつだって有意義っぽい関わりが生まれているわけじゃない。でも自分で言っておきながらやっぱり、有意義ってどこまで行ってもちゃんと定義することができないよね。ひとことも言葉も交わさない関わりが何かを起こすかもしれないと思ってるよ。
この日の出会いはそういう自分の中に流れている考え方をまた深く思わせてくれた。
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自転車のサイドバッグがちょっと裂けてしまっていることに気がついて、テントの中でゆっくりと繕った。午前中いっぱい使った。ダメージは小さいうちにケアするのが良い。
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今日は自分の自転車のブレーキ操作が悪くてスリップ。車体が横向きになってしまい、車が後ろから迫ってきているところで、危うく追突されそうになってしまった。危なかった。地面が湿っている時ほどゆっくり移動しなければならない。
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暗くなってからたどり着いたすごくローカルな雰囲気のカフェでテントを張れる場所をいつものように訪ねようとしたらアラブっぽい顔の若者が英語でとても人懐っこく話し始めてくれて、結局彼の家の空いたスペースに泊まらせてもらえることになった。
名をバシルと言った。ぼくが日本人だと聞くとアニメが好きだと言っていろいろなタイトルで盛り上がった。
カフェでのお茶、そして晩ごはんもご馳走してくれた。トルコでもアルバニアでもボスニアでも思うが本当にイスラム圏の人は旅行者に対してオープンマインドだと思う。こういう人助けをナチュラルにやってくれる。
バシルは僕の状況や旅してきた場所の話を聞いて「You are the coolest」と言ってくれた。ぼくからすれば君がcoolestだって話だけどね。
自分はただ必死で生き残ろうと泥臭いことをしているだけだ。でもその姿は誰かにとってのヒーローになるのかもしれない。それをほんのり思い出すことができて、その意味でもバシルに感謝である。
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駆け込んだカフェ。
ケーキやコーヒーもご馳走してもらった。
店の中でちょっとした有名人になる
セイードさんというこちらの方は大学でイスラム教の教員を専門に教えている人で、博識な方で、色々なことを語って聞かせてくれたのだけど、ボスニアはヨーロッパでただ一つ、メキシコと同じ形の遺跡が出土した国だという話を教えてもらった。すごい秘密を聞いてしまったような面白さだった。写真がピンボケたっだのが悔やまれる。
アロニアジュースを奢っていただいた。
カフェでゆっくりした後はバシルがパン屋でブレクを買ってくれた。
バシルが一人暮らししている家。一階に彼は住んでいて、自分は2階を使わせてもらった。