HIRO EATS THE EARTH

地球まるごといただきます

豚の屠殺を見せてもらう(クチシュタKućišta)

眠る場所を求めてたどり着いた村。灯りのついた家の前で何人かの男がいた。

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寝場所を尋ねると「その辺でキャンプ普通にして大丈夫だよ」と教えてもらい、良い感じの芝地を見つけたのでそこにテントを張ることにした。

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その男たちに水をもらおうとして訪ねると、彼らは豚肉の解体作業をしていた。

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反射的に「これは見せてもらわねば」と思い、近づいてまじまじと見ていると「見ていきなよ」という感じで迎え入れてくれた。ある程度英語でやりとりができるのでちょっと彼らの仕事のことを教えてくれた。

彼らはこの地域でシェアするための豚を解体しているところだそうだ。今日は一日中作業で1頭300kgを11頭も解体したという。きっとものすごい労力だっただろう。

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なまなましい風景に見入った。

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彼らの一人がスマホで日中の動画を見せてくれた。生きている豚を殺すところだ。これは自分にとってとても貴重な映像だったので、印象に残ったままでしかないけれど、言葉で書き残しておきたい。

場所はいま、自分がいるここ。複数人で一頭の豚を囲んでいる。豚に餌を食べさせていて、その隙に輪っかのついた頑丈な針金のようなものに豚の鼻を通して締めた。豚の動きをこれで制限するようだ。豚は手足でジタバタするけれど鼻を拘束されて思うように動けない。拘束している人も豚が動かないように全身で踏ん張る。

そこにもう一人がこの斧を振りかぶって、刃じゃない方で豚の脳天を思い切り打った。

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豚はおそらく平衡感覚を失ってよろけながら、でもさらに力いっぱい暴れた。苦しそうな声をあげている。拘束している人は豚の力に引っ張られた。

もう一人がその隙に豚の頸動脈と思われる部分を切った。切ったところから血が大量に流れ出た。豚はさらに暴れた。拘束している人はさらに引っ張られた。

豚の動きが弱まっていく。動きが鈍くなったところに、斧の人がまた3、4回、先ほどと同じ要領で豚の脳天を打った。豚の声はどんどん力なくなっていって、地面に崩れ落ちた。

この映像は、多分見る人によってはしばらく気分が悪くなってしまうものだったと思う。見せてくれた人も「大丈夫?」と気遣ってくれた。

ぼくはというと「こうやって屠るのかぁ〜!」という感じで感激した。圧巻だった。

自分は大抵の食べ物は美味しく食べる。それなのにその食べ物ひとつひとつがどうやって作られるのかをほとんど知らない。

肉を食べるということはどこかで誰かがその生き物を殺しているということ。当たり前のことだ。なのにぼくは生まれて30年以上、その過程をほとんど見たことがなくてその事実への実感が薄い。

15年くらい前に一度、インドネシアの路上で多分食用の牛の首を切られる瞬間を見た。その時の牛の一際低い呻き声にショックを受けたことがある。小さい頃から牛肉を食べまくっておいてそこでショックを受ける自分を変だと思ったし、人生の中で屠殺を見たことがあるのがその時だけって、なんかこう、「この地球に生きる生物としてぼくは正常なんだろうか」と考えてしまう。もっとぼくは生きることのリアルと向き合った方が良いと、心の片隅でずっと思っていた。

だからこの映像を見ることができて心底良かったと思った。あとで「豚 屠殺」で動画検索すると確かに色々な屠殺現場を見ることができるけれど、機械を使って電気のようなものを流して気絶させていたり、工業化されているような印象だった。

その点今回映像で見せてもらったのは全てマンパワー。手作業だったので、それもまたありがたかった。「殺るなら自分の手で」と、なんとなく思う。

肉だろうが植物だろうが穀物だろうがなんでもそうだと思うけれど、先日ガブリエル氏から言われた「感謝を持っていただく」というのは、ぼくの場合、それを食べるために必要なプロセスの全てを自らの手で完遂する必要があるだろうなと思った。

そんなわけで、ぼくもいずれは農の世界に身を置くような予感がする。旅をしながらなのか、どこか一箇所に定住して、なのか、それは分からないけれど。

肝臓や心臓。豚の身体の構造は「人間と同じ」だそうだ。

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「小屋の中に子豚もいるよ」と教えてもらったので見に行かせてもらった。

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ものすごく臭い。糞尿とかの匂いが混ざっているんだろうな。

親豚と思しき豚と子豚はこうして隔離されるのか。

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子豚はなんか無邪気にひたすら地面の餌か水分か、何かを求めて食べようとしているようだった。

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カメラを近づけて撮った。子豚は無邪気に近寄ってくるのでくっつきそうになったら離れた。

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親豚が排尿する。すごい量だった。

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改めて肉の解体を見せてもらう。スーパーのパックや焼肉屋の皿に乗った肉。こうやってできていくんだなあと、小学生の社会科見学のようなことを今更やってる33歳。

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きっと汗ばむ作業だったんだろうな。尊敬します。余所者をあたたかく迎え入れてくれた彼らに感謝です。

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