ニコラは別のゲストが来て忙しそうだったので挨拶して別れた。
ありがとう!
今日も快晴、ゆっくり進む。
モンテネグロでは500〜600gくらいのでかいパンを0.3〜0.6ユーロくらいで買うことができる。ぼくの強い味方だ。
この日もパンを求めてパン屋さんを探しながら走る。
発見したパン屋さん、そこのレジに立っていた女の子
「日本人ですか?」と
日本語で話しかけてきた。
「わたし、日本が大好きです」「日本人は、優しいと思います」
簡単なフレーズでもこんなに出てくる人なかなかいないよ。すげえじゃん!
彼女の名前はイシドラ。
20歳でこの家族の経営するパン屋のお手伝いをしているそうだ。
イシドラが日本に興味を持つきっかけ。それは15歳の時に母に勧められて読んだ三島由紀夫の作品だったそうだ(おれ読んだことねえ。。)。
他には芥川龍之介の短編集を読んだり、今は太宰治の「人間失格」がお気に入りだそうだ。
イシドラ曰く、モンテネグロにはこういう面白い作家がいなかったから読書自体してなかったけど、日本の作品に触れてからどんどんのめり込んでいったのだという。
いやあ改めて洗練された芸術っちゅうのはすごいんだなあと実感させられた。
現代の日本人では村上春樹を読むし、三浦春馬がとても好きだったそうだ。故に例の事件の翌日に知って大変ショックを受けたという。
こういう日本のすごいところによって友達ができるケースは結構ある。影響力というものの凄さを実感する。
サービスで菓子パンをご馳走してくれた😊
自分はたまたま持っていたパックのお味噌をあげた。
嬉しそうにもらってくれた。
何気なく立ち寄った場所でこういうご縁ができるのが嬉しい。多分観光地の写真を撮るよりも楽しい。
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店のすぐ横のテーブルでパンを食べようとするとサイクリストが通りかかった。彼の方も興味を持ってくれたようで近づいてきた。
同業者をみると嬉しくなる。
なんとなくこう、旅の苦労とかそういうのを色々理解しているような感じで、それを踏まえた雰囲気で「元気?」と声を掛けた。
彼はトマスというドイツ出身の35歳。去年の6月から自転車旅を開始。僕よりもちょっと長い。パンデミックで動きにくかったので主にイタリアに長らくいたらしい。
旅する前はなんのお仕事か詳しくはわからなかったけれど自営業だったらしい。
ちょうどコーヒーを煮ようと思っていたので彼の分も淹れた。
そして一緒に記念撮影。トマスはでかい。203cmだそうだ。
この身長差は遠近法ではないぞ。
サングラスを外してもらうのを忘れたので素顔も撮らせてもらった。
トマスはどこまでいけるかわからないけれど東へ向かい、できることなら日本も行ってみたいそうだ。あと数年は続ける予定だそうだ。
ひとしきり笑い合うと彼は軽やかに走り去っていった。
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バンで旅する男女ペア。顔つきがベルギー人っぽかったので旅行者だとすぐにわかった。彼らはパイを買ってきた彼らはぼくの前に座った。自然と話が始まってオランダ人だと分かった。
またコーヒーを沸かした。
なんか、パン屋の横に開店したコーヒー屋さんになっている。
男性のエンジオは看護士さん。女性のリアンネはお医者さん。長期の休暇をとって旅をしている。馴れ初めは聞いてないけれどなんとなく想像ができる。二人とも30手前。
これからアルバニアに入ってフェリーでイタリアに渡っていく。あと一年近く旅を続けるそうだ。グッドラック。
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また走り出す頃には日が結構傾いていた。
事故が発生したりしていた。
ティヴァトに到着、日の入りごろだったので景色を見るために海へ。
英語でフレンドリーに挨拶してくるおじさんがいた。
自分が日本人だと答えると
「わたしの、名前は、ジョナサンです」と日本語で挨拶してくれた。
ジョナサンはカナダ出身、アメリカのテキサスに越してそこで育ったそうだ。
今はカップルでこのあたりのアパートを借りている。web構築の仕事をリモートで受けながら旅するデジタルノマドワーカーだ。これまでもスペイン、フランス、モロッコ、ブルガリア、南米ではコスタリカなど色々転々としてもう4年になるという。アメリカ人の軽やかさが際立っている人だった。友達が多そうだ。
彼は僕の自転車旅の話を聞いて自転車を見て、色々感心してくれて、25ユーロ手渡してくれた。恐れ多い気持ちを持ちながらも遠慮せずに受け取った。
ジョナサンは「もしティヴァトに滞在するなら一緒に食事に行こう」と誘ってくれた。
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ジョナサンと別れて暗くなってたけれどまだ18時。どこかで作業する場所を探す。
たどり着いたバーでは店の中に入って早々、酔っ払ったモンテネグロ人のおじさんに絡まれた。が、ビールをご馳走してもらった。
理解できるか、理解できないか、ギリギリの英語を話す人で、彼は全然理解できないのに何度も何かを訴えかけてきた。10分くらいかけて頑張って聞いたことを要約すると息子が日本のサッカーリーグにしばらくの間在籍していたらしいということだった。「うむ、そうか」くらいの反応しか返せなかった。こういう、家族が日本と関わりがある系のネタはよく振られる。店のわんこ。
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作業したかったけれど絡まれて作業ができなかったのでまた場所を探し、ちょっと大きなバスターミナルで電源とWi-Fiがゲットできることが分かった。これはありがたい。少しだけ作業ができた。
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寝場所のあてははっきりしていなかったけど、地図上で見つけた公園のような場所へ。門には鍵がかかっている。けれどフェンスが空いていて入れる。灯りのない公園に入っていった。めちゃくちゃくらい。それだけで怖い。
そこに一人、ポケットに手を突っ込んだ人のシルエットがやってきた。めっちゃ怖い。自分から声をかけてみるに限る。
顔は全然見えない。話した感じ英語は通じない。アルバニア人のようだった。
が、キャンプをしたいという意思は伝わったようで、「カム、カム」と海の近くで、眺めが良くて人通りの少なそうな場所に連れてきてくれた。
彼はテントを組み立てる様子を見届けると、「もう寝る」と気遣ってくれて自分から立ち去った。お礼を伝えた。
モンテネグロ人、ドイツ人、オランダ人、カナダ人、アルバニア人、色々な人と話をした日だった。とりわけ意味の通じる会話をすると気持ちが良いもんだなあと思った。
小さな波の音を聴きながら寒い夜を寝袋の中で過ごした。