8泊9日間お世話になったドギーさん宅を出発した。
「大事なのはお金よりも健康だよ」分かれる前の立ち話でドギーさんが言った。
ドギーさんは腰を悪くされていて、片足を引きずるようにゆっくりと歩く。奥さんのローレインさんはもう椅子に座ったまま一日中ほとんど動けない。ドギーさんはカーレーサーだったしローレインさんは陸上のハードルのアスリートだったそうだ。歳を取ってから旅行をしても身体が動かずに満足に楽しめなかった友人の話も交えて、今ぼくが身体を張って旅していることの大事さを伝えてくれた。そのドギーさんの言葉には忘れ難い重みがあった。
ぼくは、偶然の巡り合わせである種才能とでも言えそうなくらい動く身体を持っている。それを使うも使わないも自分の心向くままで良いわけだけど、やっぱり自分はこうして見るとこの心身の状態は一つの巡り合わせだと思う。「お金とか社会性とか評価とか他者貢献とかそんなこと全てなんでも良いから身体がダメになるまで歩いたれ」と改めて思えてくる。
一方で「健康」と縁遠い人のことを思う。
これといってなんの不調もないけど単に体を動かす気になれない、という人もいるし、先天的な障害で指先一本すら自分で思うように動かすこともできない人もいる。
じゃあそれは残念なことか、というとその見方は眠たくて面白くない。
動けるから出来ることがあれば、動けないから出来ることがある。単にこの社会の設計が、世に普及している常識が、健康とそれに付随する諸々を優位としている風潮があるだけで、身体の動く動かないに関わらず、一瞬一瞬全てを旅とすることだってできるくらいの自由がこの宇宙に開かれていると思う。まあその辺は身体を壊すようなことがあった時に試してみよう。今は今できることを。
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羊や牛がのんびりとしている広い草原に挟まれた穏やかな道を進んで気持ちいい。
今日は町から離れたところに建っているお宅にお住まいのリチャードさんという方にお庭でのキャンプを許可していただいた。コーヒー、パスタもご馳走してもらってほくほく嬉しい。ジントニックを飲みながら、今の奥さんとの偶然の出会い話を聴かせていただいて楽しかった。久々に会話したけどやっぱり英語が自在に話せたらなぁと思う。
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お世話になった8泊9日もの間お世話になったドギーさん宅
ご夫婦は愛犬家。この子ははもう目が見えないのだけど大事にされていた。
旦那さんのドギーさんと奥さんのローレインさん。ドギーさんはいつも優しく笑っていた人なだけに無表情な瞬間になったのが少し残念。
盲導犬の支援をされているそうです。
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イングランドに戻ってきた
気持ちいい天気。
久々の出発早々、前輪がパンク。
ファームから抜け出した羊が一頭
近くを通ると必死に逃げ帰ろうとするが通れない。あんたどっから出てきたん。
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リチャードさんに用意していただいた夕食
ティン・ホイッスル(調べてみたら日本でもみたことあったな)というアイルランド発祥の楽器を演奏されていた。このホイッスルはちょっと特別で、友達の職人さんが作ったものらしい。アイルランドの音楽をネットで聴いた時に聞こえてた笛の音はこれだったっぽい。
今日のテント
ジントニックを入れていただいた。