合掌とお辞儀(ヨーロッパ人から見たアジアの人の挨拶のイメージとしてこの動作は定着しているように思う)で遠くからこちらに挨拶しているおじさんがいる。あちらから歩み寄ってきた。自己紹介が始まる。あとちょっと移動しようと思っていたけれど、おじさんの雰囲気がとてもフレンドリーだったので、泊まる場所の協力を求めた。彼は自分のお宅のお庭にテントを張らせていただけることになった。
名前はハリーさんといった。奥さんのジュリーさんも帰ってきて珍客の姿を目にするなり「あら、あなたは何者?」と、とても楽しげな笑顔を見せてくれながら握手してくれた。かわいらしい人だった。
お庭のテラスでIPAビールやピザをご馳走になって生き返る心地を味わい、シャワーも浴びさせていただいた。彼らの旅の話やお二人が出会った時の話、ハリーさんの撮った写真やジュリーさんの好きなスコッチを試させていただいた。スコットランドやアイルランドを中心に昔話されていたゲール語という言語も少しだけ教えてもらった。異なる文化を共有しあえることを楽しめる人たちが集まる空間は本当に居心地が良い。
コロナ対策の話題になり、この場の全員が「あれはほぼ空騒ぎなんだよね」という意見で一致した。さらに居心地が良くなる。
過剰に怖れる人のなんと多いことか。
「みんな必ず死を迎えるものなのに」長年精神科医を勤めた経験もあるハリーさんの言葉は印象に残った。
何人も人と出会っていると自分が心惹かれる人、価値観がとても近いと感じる人はちゃんといる。自分は決してそういう人が多くはないのだけど、このご夫妻に対しては衣食住のお世話に対する感謝だけでなく、目に見えない大事な部分で共鳴するものの気配を感じて印象深かった。
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スコットランドの典型的な景色。丘と草原と牛や羊
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かなり長い上り坂で自転車を押していると、高速道路整備の車が前で停車し、中の人が「丘の上まで運んで行ってやるよ!」という感じでぼくの「家」丸ごとを呻き声をあげながら持ち上げてくれた。
荷台の上で風にふかれ、流れる景色を見ながら自己紹介をして他愛もない話をする。「スコットランドはいいところですね」なんて気の利かないセリフしか言えなくても笑顔で嬉しそうに「そうだろう」と答えてくれるような彼らの雰囲気が好きだなあと思う。ひと吹きの風のような出会いだったけれどありがたかったです。
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言われた通りここから先は下り坂。楽々だった。
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ハリーさんのお庭にて。愛犬くんは元々牧羊犬なのだが耳を悪くしてしまって仕事が思うようにできなくなったところをハリーさんが引き取ったという。今は仕事がないがエネルギーは有り余っている。延々とテニスボール投げをねだられた。
とりあえずコーヒーをいただく
お庭にはガネーシャやブッダなど並んでいる。プランティングも最近始めたそうだ。
IPAというのはIndeian Pale Aleでインドに輸出する際に長い航路でも鮮度が落ちないように作り方をひと工夫加えたものだということをハリーさんに教えてもらった。
ピザ、ご馳走様でした。
また別のIPAビール。どれもたまらないです。
スコットランドで初めて飲んだスコッチ。
この写真のすぐ左には小川が流れていて、水の音を聴きながらゆっくり眠りました。ありがとうございました。