湖の辺でのキャンプは何事もなく完了。
ものすごく寒い。後片付けする手がかじかむ。
小銭を使い切るためスーパーでジュースを購入。柿(kaki)を発見。
スロベニアに移る前にできるだけ作業を進めておきたくてカフェを探した。
現金が手元に残っていないのでカード払いができる場所を探したけれど、そんなところはなかなかない。
3件くらい回ってもだめ。が、こちらのカフェで融通を利かせていただいた。
カプチーノを無料で振る舞っていただき、電源とインターネットをお借りした。
ありがたやありがたやあ〜〜〜🙏
そしてカプチーノが、なんだか分からないがものすごく美味しかった!
助けてくれたイヴァンというお兄さん。「俺は世界一美味いコーヒーを淹れる人間だ」と笑っていた。旅の話を少しだけして応援の気持ちを寄せてくれた。
ここはスロベニアの国境が近い。色々な旅人が訪れるそうで、以前スペインからインドまで自転車で行った旅人が来たことがあると言っていた。
・・・
クロアチアも今日で見納め。
国境ゲート到着。記念に一枚。さあ、いよいよだ
が
ここで係官
「EU市民じゃない人はここを通れないよ」
あ。
「やってしまった」と瞬時に思った。
事前に旅行者が通れる国境を調べていなかった。
確かにそういう国境があってもおかしくない。
一縷の望みをかけてスロベニアの係官にアタック。
が、開口一番
「通れないよ」
軽々あしらわれた。。。
これはまずい。
何がまずいかというとPCR検査だった。
昨日17時17分に受けた簡易PCR検査の有効期間は24時間。
この時、時刻は14:30を回っていた。
あと3時間もしないうちに別の国境を通らなければならない。
焦る。心臓の鼓動が速くなる。
係官にどの国境なら通れるのかと食い気味に尋ねた。
「Kumrovec」という国境を教えてもらった。
地図ではここから30kmほど離れたところにあった。
3時間足らずで30km走らなければならない。
不可能なことではない。
が、不安材料は多い。
もし上り坂が多かったらだめだ。
途中でパンクはじめどこかしらが故障したらやっぱりだめだ。
急ぎすぎて事故るのは論外だ。
安全をキープしながら速やかに移動する。
いけるか?
不安は頭を巡るけど結局選択肢は一つしかない。
急ぎ漕いだ。
長く漕ぐのは得意だ。
でも早く漕ぐのは苦手だ。
いつもは使わない神経を全部開いた。
集中。
できるだけ余計なことを考えないようにする。
意識がほんの少しでも漕ぐことから逸れたらそれはロスになる。
「漕げ、漕げ、こげ、こげ、こげ、こげ、、、、」
息が上がりまくってはあはあ言いながら口に出し続けた。
漕ぐことだけを考える機械のようになれ、なるのだ。
でも合間に記録のための写真は撮れた。
こげ、こげ、こげ・・・
案内板にKumrovecが出はじめた。こげ、こげ、こげ・・・・
こげ、こげ、こげ・・・・・
間に合うペースで半分以上を消化した。焦るな。
でも油断するな。もしかすると国境がものすごく渋滞してるかもしれない。
何が起こるか最後までわからない。
こげ、こげ、こげ・・・・・・
こげ、こげ、こげ・・・・・・・
途中、オフラインでも使えるはずの地図が表示されなくなってしまい、カフェでWi-Fiを使わせてもらって進路を確認した。すごい勢いでカフェの人にパスワードを迫ってしまった。
タイムリミット30分前。国境が見えた(写真左上)。
到着ー!!ガラガラだ。行ける!
入国審査。シェンゲン圏の入国はなんかセキュリティが高そうなイメージがある。
ここでちょっとでも何か言いがかりをつけられたらもうだめだ。
こんな季節に自転車で旅するアジア人なんて稀有すぎるのだろう、いろいろ質問される。どこへ行くのか、なんの目的か、どこで宿泊するのか(野外でキャンプです)。
通れますように、、通れますようにと念じながら応答。
そして
無事に通過ー!!!スロベニア!!!
スロベニアの係官には「こんなに寒い中お前は自転車で旅をしてキャンプもするのか」と失笑と共に心配された。笑
・・・
さあ、もう日没だし疲れたので付近で寝る場所を見つけることに。
これまで通りの、バーにお尋ね作戦。
国境すぐ近くにとてもこじんまりとしたバーがあった。
スロベニアで初めてのコミュニケーション。
バーにはお客さんも何人かいたけど突然の珍客が来てもそんなに珍しそうじゃない。
バルカン半島の国ではおじさんが「なんだありゃ?」という感じでずーっとこちらを見てきて何か話しかけてきたりしたものだ。やはりシェンゲン圏となると外国人慣れしてるのかな。
50代くらいに見える女性がオーナーで英語が通じる人だった。
お金はないからキャンプができる場所を教えて欲しいと尋ねる。
「ええ〜?」とちょっと怪訝な感じだったけどそれでも彼女は電話で友達に何か尋ねてくれた。
彼女から電話を渡された。
電話の向こうの人はこの近くのホステルのオーナーの男性だった。
「うちは15ユーロでかなり安いけども」
「はい、とても良いお値段だと思います。しかし私は今本当におかしな状況下に居りまして、その額ですらも節約せねばならぬのです。だからテント泊で十分です」
すみません。頭を下げながら応答する。
「うーん、ちょっと待ってて」
一旦電話を切って1時間ほどバーで待つ。
オーナーの女性の方はお茶とおやつを振る舞ってくれた。
全集中で30km走った身体にものすごく沁みた。
袋に入ったクッキーはハート型だった。
ドーナツの中のクリームが嬉しい
しばらくするとホステルのオーナーさんがバーに姿を現した。
ああ、わざわざ足を運んで下さってすみません。あの、テントを張れる場所は。。
「ノーノー、今の季節、外は寒すぎるよ。今晩だけ無料でぼくのホステルの部屋に泊まらせてあげるから来なさい。」と言ってくれた。
ああああああーーーーマジですかぁぁーーーーー!!!!
オーナーさんはヨージェさんという人だった。すごく人当たりの柔らかい人だった。
ホステルの場所を教えてもらい、数キロ走って到着。
ヨージェさんに案内されて中に。
ホステルはそれはもうすごくすごく綺麗なところだった!
自分一人にはもったいないダブルベッド。裸足で歩いても気持ちいいピカピカの床。
このクオリティ、クロアチア以前の国々の宿ではなかなか見られなかった。
充実度が段違いだ。シェンゲン圏に来たんだなあとますます実感した。
フカフカのベッドに倒れ込んだ。
・・・
この日の移動は地図にすると40km程度だけど。いやもう、ほんとうに壮絶だった。。