HIRO EATS THE EARTH

地球まるごといただきます

車が故障して困っている家族にお金を貸す(オストルジュニャ・ゴルニャOstružnja Gornja→マグライMaglaj)

マグライのレストラン「KAMENI ZAMAK」に戻る日になった。40kmとちょっと、レストランまでのんびり進んだ。レストランに着く少し前で前回会った自転車屋のおじさんがぼくを車で追い越しクラクションを鳴らした。道端に車を停めてブレクを差し入れしてくれた。ブレクってそういえばシュウマイみたいな味がする。見た目は全然違うけど、素材が同じだから当然かと1人納得した。

途中、レストランに到着する4km手前、道端に停車させた車のボンネットを開けている家族の横を通り過ぎる。その際、目が合うなり男が「助けてくれ」と合図をしてきたので止まってみた。

家族連れだった。若い夫婦に小さな子供。男の顔はボスニア人っぽくて、女の顔はエジプトとかアラブ風だった。英語は男がほとんどわからない、女は最低限意思疎通ができる。でも総じてあまり丁寧なやりとりができない。

「なにをしてほしいのか?」と尋ねると男が翻訳機を使って伝えてくる。しかし翻訳文が不完全。何度も確認し、彼らの問題を理解し、次に自分になにをして欲しいのか何度も尋ねた。

それをまとめると「車が故障した、油を買わなければならない、現金がない、カードも明日以降でないと使えない、明日返すからお金を貸してほしい」ということだった。

連絡先を交換したかったがお互いにネットが繋がらない。ViberをやっているというのでViberの電話番号を見せた。この後ネットワークに接続できたら必ず連絡すると言った。彼らのことを信用して自分は彼らの連絡先を聞かなかった。

そして「自分はこの先のKAMENI ZAMAKにいるからそこに必ず届けて欲しい」と念押しした。女は「その場所なら知っている」とゆったり答えた。男はわかっているのかわかっていないのか、全ての言葉に対して「イエス」と答えていた。

ここまで話をまとめるのにかなり何度も問い返した。はじめはぼくは彼らの言葉から40マルクだけ欲しいのかと誤解して、それだけ差し出したけど、「ノーノー」と言われて電卓に数字を入力してもらって125ユーロだとわかった。その際男は開きかけの財布に手を伸ばしてきてお金を取り出そうとしてきたので咄嗟に威嚇した。

「大丈夫だ、必ず返す、アッラーが見ている」と天を指差した。

彼らの一連の態度が目についた。全てが荒くて雑。言葉の通じなさの問題ではない。何にでもイエスと応えて誤解させる男。何度尋ねてもなかなか進まない会話。あちらからすれば単純にフランクなだけなのだろうと思うけれど、自分は日本人基準で見てしまうので、丁寧さが足りないと思った。

「とにかくすぐに助けてくれ、細かいことは良いからとにかく助けて」という感じに受け取ってしまう。こちらがお金を貸すことを心底恐れていることに配慮が足りていないように感じてしまう。

多分、旅する前の自分ならこういう人とは距離をとっていたと思う。

けれど、自分はここまでほぼ毎日、日常的に誰かに助けてもらってこの旅を成立させている。この国でもそうだった。毎日のように誰かが笑顔でぼくを生かしてくれた。それに対して恩返しは全然できていない。返せるものがない。だから恩を送ることはがんばろうと思っている。助けてもらった分他の人に手を差し伸べられるときは積極的に助けたい気がする。

だからこの時は細かいことは言わずさっと助けたいと思った。それが緩みにつながったと思う。125ユーロを渡した。

ムスタファは喜んでハグしてきた。半信半疑で煮え切らない自分はそれに応じなかった。信用したかったけれどどこか信用できない、中途半端な状態で、それでも信用することにした。

男の名前はムスタファ、女の名前はジャスミンと言った。2歳くらいの子供を抱えて挨拶したりした。ジャスミンはやりとりの間フレンドリーにぼくの出身地などを尋ねてきたりしたけれど話が曖昧なうちにそうやって距離を縮めようとする感じに小癪さを感じて、それに応じる気にはなれず、ぼくは無視して詳細を詰めるための話に切り替え続けた。

話が一区切りしてその場を離れた。少し走ってから、念のためと思って写真を撮った。車のナンバーも撮った。男は余裕で撮影に応じていたし、お金も具体的な金額だったし、そのまま盗むという意図はないように感じた。モヤモヤが残る。それでも明日ちゃんと来てくれるだろうと信じた。

レストランでは久々の面々とあいさつを交わしてご馳走していただいた。写真を頼まれてお客さんのいる様子をいくつか撮った。

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