HIRO EATS THE EARTH

地球まるごといただきます

雨ふる夜道を進む(コトルКотор→グラヴァティチチГлаватичићи)

コトル湾を見回った後は泊まる場所を探す。雨予報だったのでなんとか良い場所に辿り着きたい。

Googleマップを調べていたら、ファームステイが出来そうなキャンプサイトを発見した。20kmくらいしか離れていないので行ってみた。

が、そこは山の上。かなりの急勾配(10%はあったと思う)。自転車を手押しでノロノロ進んでいるうちに雨がどんどん激しくなってきた。街灯もなくて真っ暗。後ろの荷物にビニールシートを被せてさらに歩く。早く終わってくれ〜と思いながら、息が上がって坂道を何度も止まりながら、ノロノロと進んでいった。真っ暗で雨も降っていて余裕もないので写真は全然撮っていない。大通りから外れる直前のこの写真くらい。

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坂の途中で村のような場所に差し掛かる、と言っても4世帯くらいしか家がない。雨がかなり強くなっていてぶっちゃけ助けてもらいたかったので、その中の一軒の扉の前に立って大きな声で「ドバルヴェーチェ!」と10回くらい呼んだ。

夜に民家の人に助けを求めることはあまりしたくない。日本みたいにインターホンというものが標準装備ではないし、暗くなってから、門を開けて、人の敷地に入って呼びつけるなんて、迷惑千万だろうし、怖いだろうなと思うから。が、この時はもうそんなこと言ってる場合じゃなかった。

中からおじさんが顔を出す。娘さんと思しき子供が二人、そして奥さんも奥からこちらを伺っていた。

英語が通じないので翻訳機でキャンプ場に向かっていることと、雨宿りがしたいことを伝えた。すると「とりあえず中においで」という感じで家の中に入れていただきリビングに通してもらった。大きなテレビからニュースが流れていた。娘さんはスマホでゲームをしていた。

「何か食べるか?」と尋ねてくれて、テーブルにお食事を持ってきていただいた。ビールも500ml缶でいただいた。とてもとてもありがたかった。

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お父さんはコトルにある日本の会社に勤めていると話してくれた。名前を覚えていないのだけど、船や車のエンジンを作っている会社だった。日本人である自分がこうして良くしてもらえるのはその会社のおかげでもあるだろう。

1時間くらいゆっくりさせてもらって、雨が止んできたのでまた出発した。暗い、暗い、暗い、暗い。時々向かい側から、背後から車が走ってくる。かなり怪しいと思われているだろうなと思いつつ歩き続ける。

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地図を見ながら進んで、到着した。犬の鳴き声が聞こえる。が、灯りらしい灯りが見えない。フェンスがあって侵入した。犬が吠えながら駆け寄ってきた。かなりうるさいけれど尻尾を振っているので敵意は多分ない。旅行者がたくさん訪れるから慣れているんだろう。

が、問題は奥にうっすらと見える建物に灯が灯っていないことだった。多分、休業中ということだろうと察した。夏だけ営業しているキャンプ場。そういうことだったみたいだ。

見渡す限り森か農場か草原だったので、疲れていたし、明るくなるまでどこかでキャンプしても良さそうだった。でも、なんというか、暗い中を数時間も進むとやっぱり明るさや温もりが欲しいなと思う。

人のいるところがやっぱり良いなと思ってさらに進むことにした。地図を調べるとレストランがそこまで離れていないところにあるので行ってみることに。今度は下り坂。ブレーキシューがどんどんすり減っていくのを心配しながらゆっくり降りる。

街灯のある村まで来た。いろんな家の庭に繋がれている犬から吠えられまくった。

レストランに到着した。

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テーブルを5人の男女が囲んでいた。多分この店の家族だと思った。彼らは珍客を発見するなり「座りなよ」と言ってくれた。ものすごく安堵した。明るくて暖かくてフレンドリーな人もいる。そうそう、こういうところに辿り着きたかったのだ。

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5人の男女のうちの一人、若い女の人はアメリカからの旅行者で、モンテネグロの居住ビザを取得してもう1年ほど住んでいると言っていた。この村の人たちみんなと仲良くなっているようだった。自分も家族だと見間違えるくらいだったしな。

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泊まる場所(雨が凌げる場所)の相談をすると、「家族」みんなで話し合って、彼女が「友人の家が良いと思う」とすぐ近くまで歩いて連れて行ってもらった。(翌朝の写真)

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確かに素晴らしい屋根がある。この家の人は現在スロベニアへ旅行中なので家が空いているとのことだった。

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彼女は先に帰った、帰り際にお米チップスやグラノーラをいただいた。貴重な食料だ。

泊まる場所が決まって一安心、レストランのテーブルに戻ってラキアを勧められたりして、セルビア語で何かを話すみんなの顔を眺めながら落ち着いた。

お父さんは昔船乗り、日本の佐世保に上陸したこともある。引退後、このレストランを数年前にオープンしたそうで、毎年旅行シーズンは観光客で賑わっているそうだ。

息子さんは現役の船乗り、最近韓国付近で撮ったという大規模な漁場の風景を見せてくれた。「これ、多分違法なやつだぜ」と教えてくれた。へえ〜そうなのか。

良い雰囲気のレストランだ。

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奥さんにサンドイッチまで作っていただいた。チーズとハムが挟まったバルカン地域の定番品。いやはや時間にすると4時間くらいだったけれど、天国も地獄も味わったような濃い時間だった。その中でも農家さんに助けていただいたし、最後も極楽に落ち着けてよかった。明るくて暖かいって、改めてすごいことだなと実感した。

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