HIRO EATS THE EARTH

地球まるごといただきます

雨の音を聴きながら(Kastoria Καστοριά)

この時期にこんなに長く雨が続くことは珍しいとジョージさんが言っていた。

ジョージさんは毎朝カフェに行く前に立ち寄るパン屋さんがある。すごく小さい、他のお店の並びにある、ごく普通のパン屋さんで、店の内装も見た感じ最低限という感じ。その店の前に車を停めてパンを買いに行くジョージさんを助手席から見ているだけ。そこで二人分のパンを買ってきてくれる。今日はチーズ入りのベーグル「ククリ」とギリシャでは呼んでいるそうだ。

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店のオーナーのことを「あいつはとても良いやつなんだ」とジョージさんがいつも言う。車の中から見た感じ、小柄で動きがちょっと遅いおじいさん。顔はマスクで隠れてよくわからなかった。「あいつは良いやつ」と誰かに言わせるなんてすごく偉大だなあと思った。

カフェに向かう途中。街の中にちょいちょい古い建物が見える。オスマン帝国だかビザンティン様式だかわからないけれど、やっぱりいつも「おお」となる。

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今日もカフェでジョージさん世代のおじさんたちとテーブルを囲む。

その中で、自分と歳の近い真ん中の彼は24歳。テオファニスという青年で食品安全管理士としてこれから働くそうだ。途切れ途切れの英語で話をするけれど、すごく良い人であることがよく伝わってくる。多分同じクラスだったらすごく話しかけていると思う。

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彼のゴッドファーザーという人と話をしている。ゴッドファーザーというのはクリスチャンとなる洗礼を受けるときに立ち会った人のこと。ジョージさんはあのイタリアのゴッドファーザーの曲を鼻歌で歌って茶化していた。

寒い。シナモンコーヒーがありがたい。みんなギリシャ語で何かわからないことを話していて、その表情を眺めたり、雨降る街並みとか葉っぱから落ちる水滴を眺めていた。

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家に戻ってジョージさんがサルチャソースでパスタを作ってくれた。もちもちしていてすごくうまい。もちもちしている食べ物はすごく好きだ。

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「日本じゃサラダはあるのか?」という話になった。ギリシャでは毎食きゅうりとトマトとオリーブの実にオリーブオイルをかけてチーズも乗せるサラダがあるけど、日本だったら、、なんて答えたら良いだろう。自分の記憶を辿る。きゅうりとトマトはあるし、海藻も入っててそうだ、ドレッシングを醤油と胡麻油とお酢を混ぜて作ったりするな、あと大根とニンジンを細かく切って霧干し大根とかあるな。え?大根がわからない?翻訳機で調べてみると「Japanese white radish」だそうだ。ああ、どうりでここんとこずっと見てないわけだ。画像を見せるけど肝心の味の方は全然伝わる説明できないなあ。

「チーズはあるのか?」という話になって、あるっちゃあるけど一般的にはすごく種類も限られてるという話をした。個人的には最強のチーズ職人を知ってるけど、一般的には日本は牛乳がほとんどでギリシャみたいにヤギや羊がたくさんある感じじゃない。よね?

その土地の気候と、自然と、食文化と。それらはどうやって異なっていったんだろうあ、とか途方もなく大きな問いが浮かんでくる。

多分どこかの修道院で買っただろう香水。

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雨が少し弱まった夜に別の友達と散歩しようという話になったど、出発するときにまた雨が強くなって散歩は中止。代わりにスーパーマーケットでの買い物に付き合った。

野菜、パスタ、スパイス、オリーブオイル、飲み物、ガス缶、これからの旅を想定して色々なものの値段をチェックしてしまう。米1キロ1.5ユーロ未満て魅力的だ、と安いものにすぐに喜んでしまうけれど、きっとこれを製品化する過程でなんらかのよからぬことが起こっているに違いない。

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ジョージさんが二人分のカップラーメンを買ってくれた。これは中国イメージだな。久しぶりだなカップラーメン。f:id:tajimax-tj:20211010041513j:plain

作り方はよく知っているけど懇切丁寧に解説してくれるジョージさん。普通に美味しい。「日本には日清ってめっちゃでかい会社があるんだ」という話をした。フォークで食べる感じがヨーロッパっぽい。

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何かとお腹が空いているジョージさんがトーストやヨーグルトも一緒に食べようと誘ってくる。自分は全くお腹が減っていなくてむしろ食べる量を減らしたのだけど、一緒に同じものを食べるのは大事な関わりだと思うのでありがたくいただくことに。

ヨーグルトがギリシャヨーグルトだと言われる所以はその濃度にあるそうだ。簡単に言うと水分を抜いて硬くする。その分乳成分が濃くてチーズにちょっと近い感じになる。この製法はギリシャで始まったのだそうだ。濃くて分量は普通のヨーグルトと同じなのでお値段は高くなる。

このヨーグルトにかぼちゃの種とひまわりの種と蜂蜜をかけてかき混ぜて食べる。

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「ああ、お腹がいっぱいなのだからヨーグルトだけでいいよ〜」とか思ったけど確かに、これは美味しい。いっそう強いヨーグルトのしょっぱさにはちみつの甘さが混ざって味は完璧。この味の中で食感のアクセントになっている種が噛めるのは嬉しい。

やることも一区切りついてベランダから雨の音とどこか遠くで開催されているっぽいフェスでかかっている音楽のビート音を聴きながらくらい景色を眺めた。もうすぐ始まる自分一人の生活に心を向けた。

ベトナムを旅していた時の旅の記録の更新をした。写真をアップロードするだけの簡単な更新でしかないけど、自分の足跡の断片だけでも残せればと。最終的にはこれまでの生活全日分をアップロードしたいと思う。今、ブログは目の前に流れてくるものをキャッチして記すことで精一杯だけど、これがいつか編集されてより見ている人に届きやすい形になることを思い描いている。