チェーンが脱落する。
自転車を漕ぎ出すとき、加速するためにまずはペダルに思い切り体重をかけると思う。
しかしこの自転車でそれをやると「ガシャン」とすぐにチェーンが脱落する。
ゆっくり漕ぎ出さなければならない。地味に神経を使う。
もちろん頻繁にストップする。また漕ぎ出すときに神経を使う。
さらにそうやって気を遣っていても4回に一度くらいは結局脱落する。
結局疲労感は何倍にも膨らむ。しかもいや〜な疲れ方だ。
これから大陸を横断するくらいの過酷な大冒険をしようというのに
肝心の足がこうも不自由ではとても持たない
自転車をなんとかしなければ
が、この時点で所持金は全額で¥25000程度。
激安の中古自転車をやっとこさ買えるかどうかといったところか
流石に日本語で検索して出てくる情報は限られている
コンビニ店員のフハトに相談したところ、旧正月のこの時期はたいていの自転車屋は閉まっているらしい。確かに自分も数日回った感じたいていの商店にはシャッターが降りていた。そこで彼から提案されたのはイオンモールだった。あの、日本でもよくあるイオンモールだ。どうやらほぼ年中無休で開いているらしい。確かに、イオンの中の自転車屋だったら専門店よりもむしろお手頃価格で自転車を購入できるかもしれないね。
コンビニからは7km程度。日本でよく走る道なら30分程度で到着する距離だ。
金はないけれどまずは現地にいってみたら何か進むかもしれない。
すぐに向かってみよう。
30度超えの炎天下。
まだ慣れないベトナムの道路を慎重に、慎重に。
が、やっぱり脱落するチェーン。
その度に止まって直す。
暑さじりじりくる。クラクラする。
また走り出す。
すると、後輪が柔らかくなった感触
あ、パンクした。
ああ、もう、、、
昨日もテュイに案内してもらっている最中、2度もパンクした。
日本にいる時から何度も直しているチューブだ。
これはもう自分で直すより誰かに直してもらう方が良さそうだ。
自転車を押して歩き、あたりを見回して
どこか直してくれそうな場所を探す。
Googleマップに「自転車」とか「bicycle」とかに打ち込んでも
離れた場所にある大型っぽいところしか出てこない。
近くにあるオートバイの店に当たってみるが自転車はダメなようだ。
中の人が指をさして「あっちに行けば店はある」的な案内をしてくれるが
あまりにも漠然としていて日本慣れしきった自分には難しすぎる。
彷徨い歩いた結果、バイク屋っぽいお店の旦那が引き受けてくれた。
取り出した修理シールだらけのチューブを確認した旦那は
「こりゃもうダメだよ」とジェスチャーで伝えてきた。
新しいチューブを持っているようだったのでそれと交換することに。
新しいチューブを含めた一連の修理作業で¥600。
こうしてブログを書いているときはとても安かったなあと思っているけれど、
この時の、ただ所持金を少なく感じている自分にとっては痛手に感じた。
「ありがとーう!」と出発。
しばらく走る。5分くらい経ったところだろうか。
あれ?
また後輪が柔らかい。。
タイヤはぺちゃんこになってしまった。
またタイヤを外して自分で状態を確認してみると。
のおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!
買ったばかりだぞ!!
まだ一時間も経ってないぞ!!!!
なけなしの金だぞおおおおおーーーーーー!!!!
今度はもう自分で直すしかない。
今日はオンボロ自転車の相手をする一日だ。
こんな瞬間も収めておこう。
大きくさけた穴に修理テープを貼り付けた。
なんとか走れる。
ようやくイオンモールに到着。
もう出発してから4時間経ってた。
入店してすぐにパン屋を見つける。
何かひとつくらい食べようか。
歩き回って吟味する。
50円くらいで売ってるものはないかな。
写真右のバタールっぽいパンが安くてお腹が膨れそう。
45円くらいのパンを買って食べた。
ショッピングモールは5階建て。でかい。
日本で見慣れているファッションブランドいっぱい。
エスカレーターを登ったり降りたりして探し回った。
自転車屋は結局一階で見つかった。
翻訳機を使って店員さんに予算を伝えて紹介してもらった自転車がこちら。
マウンテンバイク15000円くらい。
破格。だけれど、、、、
けれど、このくらいのお値段じゃすぐに壊れてしまう気がするなあ
ダメもとで店員さんに自分の旅の事情を話して相談してみるがなんともいえない反応。
せめて自信を持って「これでなら行けますよ」とニッコリ勧めてもらえれば買おうかと思うところなんだけど。
いやあ〜どうしよう
いやあ〜〜〜どうしよう
いやあああ〜〜〜〜〜〜どうしよう
いや。
やっぱこのままで良いんじゃねえか?
元々ね、最悪歩けば良いと思っていた。
自転車なんて消耗品だ。
壊れるし、失くなるし、盗られるし
失うくらいのつもりで行く方が旅もしやすいってもんだ。
何よりやったことあるし。
よし、走って帰ろう。
で、歩道に曲がりながら乗り上げようとした時だった。
倒れた。
この倒れた自転車の上に重なるようにうつ伏せに倒れる。
背負った荷物が背中にのしかかって起き上がれない。
しばらくそのままの姿勢で思案する。
通行人がいたら事故現場にしか見えないかもしれない。
数分かけてなんとか起き上がった。
チェーンの歯車に擦れて怪我をした。
この怪我をして、さっきまで自転車は失くなっても大丈夫くらいのつもりでいたけれど、急に弱気になってきた。
やっぱり海外で自転車を手放すのは怖すぎる。。
このままじゃなにかの拍子に洒落にならない事故にあうかもしれない。。。
再びイオンへ引き返した。
が、いざ自転車を目の前にすると、また同じことで悩んだ。
買うか、買わないか、買うか、買わないか、、、、
ビールを飲んで落ち着こうとした。
「バーバーバー」ビール。
買うか、買わないか、買うか、買わないか、、、、
考え事ばかりでろくに味わえていない。
買うか、買わないか、買うか、買わないか
うーーーーーーーーーーーーーーん
モール内にはこんなカラオケボックスがある。
ベトナムではカラオケがカジュアルでポピュラーな娯楽なんだろうか。
買うか、買わないか、買うか、買わないか。。。
21:30になっていた。モールの閉業時間は22時。
よし
保留。
とりあえず、現状の自転車での環境をちょっとでもマシにするためモール内のダイソー(ちなみに、200円ショップになっている)に立ち寄り、自転車の車体により多く荷物を結び付けるためのゴム紐を購入した。これで荷物を軽くすればいくらか楽になるだろうか。
が、ここまで積んでしまうと内股に荷物が当たりすぎて漕ぎにくくなってしまった。すぐに荷物を元の位置に戻した。
結局、1日の全てを自転車に費やしてしまった。
頭を使いすぎて妙な疲れがたまった。
コンビニへの帰り道。
どこかに良い出会いでも転がってないだろうか。
と、下心を胸にあたりを見回しながら走っているとカラオケを楽しんでいる家族を発見。
ベトナムを走っているとたびたび民家からカラオケが聞こえてくる。
やっぱりベトナムではカラオケがカジュアルでポピュラーな娯楽と見た。
自転車を泊めて物珍しそうに眺める。
すると手を振ってくれたので振り返した。
せっかくなので近づいて行ってみる。
ベトナム語オンリーだったのでほとんどやりとりはできず。
けれど「一杯飲め」という感じでビールを勧めてくれた。
喜んで受け取った。
オリーブの実のような味のするおつまみもいただく。
ああ、、自転車のことが頭から離れないけれど、
どんな時でも差し出されるビールは生き返る。。。
言葉が通じないので楽しめるのも束の間。
なんだか帰る雰囲気になってその場を後にした。
帰り際はオリーブの実のようなものを
小瓶に入れてもらってお裾分けしてもらった。
ついでに「これを撮っていけ」と何かの看板を撮るように言われたのでなんだかわからないけれど撮らせてもらった。
不思議な時間だった。
ベトナム人ってなんだか関わりやすい感じがする。
自転車のことで頭がいっぱいになってなかったらもっと楽しめていたかもしれない。
自転車の問題は全く進展もないまま、
そのままよろよろコンビニにたどり着いた。
買うか、買わないか、買うか、買わないか。。。。
2020/1/29
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