HIRO EATS THE EARTH

地球まるごといただきます

染め物ワークショップ(Bakau↔︎Sitka)

ナンシーの友人は自分のブランドで服や鞄を作っていて、それに絡んだワークショップを開催していて、今回はコーラの実を潰して染める。開催した村では20〜30人ほどの女性やその子供が集まった。

道路から外れて4kmほどの田舎道を進む。

村についてまず目にしたのはおばあちゃんが地面に布を敷いてその上に座り、大量のサヤエンドウみたいな実を剥いて中身を取り出している姿。

英語では「Netto」と紹介されたこれを調べるとヒロハフサマメノキという名前で、この黄色い身はほんのり甘い粉。その中に黒い豆がはいっている。

これの黄色い粉は発効させたり色々な料理に使うし、中の豆も使うそう。

歩き回る牛や山羊やロバ、細い木を並べて先端を尖らせて作った塀、木下で集まっている女性たち、井戸から水を汲んでいる女の子、穏やかな村の中の雰囲気はテレビで見たことのあるアフリカに近かった。

マンゴーの木下に村の女性達が集まってきた。アフリカの女性は集うと景色がビビッドにカラフルになる。

マンディンカ、フラ、ジョラ、ガンビアもまたはいろいろな民族の人が混ざっていてここでは主にジョラ語を話しているそうだった。ぼくに平気で何かを彼女らの言葉で質問してくるのだけど笑うしかない。ガンビアはイギリス領だった影響で英語教育が普及しているので多少英語の分かる人が田舎にもいて、そのひとが翻訳してくれた。

染め物に使うのはこちらのコーラ・ナッツ

以前セネガルでなにかの拍子に食べさせてもらったことがあるけれどただただ苦くて渋かった。

「ゲナ」というセネガルからよく見る木臼の中、重さ3キロはあるかという木の棒で潰す。

二、三人の人でゲナを囲み、順々に木の棒を叩きつけるとビートが生まれる。そのビートに合わせていちばん陽気そうな女性が軽く尻を突き出し腰を落とした力強い足腰でステップを踏み出す。それに合わせてみんなの手拍子、それから歌がついてくる。もうみんな笑う笑う。

洗った布に模様をつけるために縦に折ったり、三角形にしたり、小石をくるんだり、それぞれのアイデアで形をつくる。

木の枝で挟んでゴムチューブで縛って固定したり。

細かく潰したコーラナッツを水と混ぜて茶色い染め液に形を作った布を漬け込んで乾かす。

布を開く瞬間は自分の作品を披露する瞬間。自信のある人はみんなに注目してもらって布を開きその出来栄えの美しさに歓声があがっていた。

柵の上から垂らして干す。

頭上の木から食べ頃のマンゴーを切り落とす。ほとんどがまだ緑色の中、黄色みがかったものを見つける。

長い木の棒の先端に鎌のような刃をくくりつけた簡素な道具で落としていた。

西アフリカで迎えるこの夏、自分の中でマンゴーは果物No. 1争いに彗星の如く現れた。この、ほんのりと酸っぱみがかった豊潤な甘さは地球の宝。口に入れた瞬間、幸福ホルモンが脳内で分泌されているのが自覚できる。ここでは当たり前に手に入るのにも関わらず、無駄に感動の意を表現するぼくはいちいち地元の人に「日本じゃこんなに当たり前には食べれんのよ」と説明するのだった。

昼食は各々が用意してくれた「ご飯+何か」シリーズ。魚と玉ねぎ炒め、落花生のペースト、プラサスというオクラとパーム油を混ぜたソース、味はどれも素材+塩味という感じで素朴。

いろんな人が集まって一緒に手作業をするのが良い関わり合いの機会になる。コミュニティを感じる瞬間。

撮影した写真の枚数は1200枚に及んだ。ほとんど参加した人の表情ばっかり撮れている。許可をとるまでは数少ない個人の顔がはっきりと写っていない写真を載せておくが、良い雰囲気だったなぁーと思う。

自分は依然、日本でカメラマンをしていた時、助産院に撮影で出入りさせていただいていたことがある。そこでの婦人ケアにはアフリカの女性の在り方を多いに参考にされていた。自分の受けた印象を大まかに言うなら「自然のまま」で在ること。それは女性に対する社会的プレッシャーに押されがちな日本人へのアンチテーゼともなろう。ここガンビアの村の女性の様子を見させていただきそれを強く思った。

授乳は隠さない、でっかい声をガンガン出す、砂で汚れる、胡座とか楽な姿勢は全然平気でとっていて、少年のようにマンゴーを取り合って戯れ合う姿も、ゲナでナッツを潰すような力仕事もガンガンやっていく、日本や欧州でおよそ「女らしさ」としてなんとなく認識されているような細かいことをぜんぜん気にしない。集団の価値観に合わせて苦しみがちな日本人にこの風を吹かせたくなる気持ちも良くわかる。とても良いものを見させていただけた。